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CAEエキスパートが見て・感じた! CAEの最新技術動向&ユーザー事例CAEセミナーレポート(2/3 ページ)

2015年5月に独ベルリンで仏ダッソー・システムズによる「Simulia Community Conference 2015」が開催された。機械メーカーのCAEエキスパートである筆者が、イベント内の講演やユーザー事例について、自身の経験談や業界事情も交えて紹介する。

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高強度スチールフレームの圧縮特性の予測(本田技術研究所 高田氏)

 少し専門的な話になりますが、スチール系の部材に対して降伏応力を超える引張荷重をかけてから圧縮荷重をかけると、圧縮側の降伏応力が低下するという現象が発生します(バウシンガー効果)。デフォルトの金属材料モデルではこのバウシンガー効果は考慮されておらず、一方向の(引張試験などの)弾塑(そ)性カーブを考慮しても、繰り返し荷重がかかると実際よりも“硬い”挙動を示すことがあります。高田氏によると、自動車ボディのフレームが衝突時に圧縮荷重を受ける際、全体としては圧縮挙動なのですが、局所的には引張が発生してから圧縮状態になる部分が存在するそうです。つまりバウシンガー効果が発生することになり、これを考慮した材料モデルを使用することで、実際の試験と非常によく合致する結果が得られたとのことです。

ゴム材料の疲労解析について(エンジニアリングセンターシュタイヤー アクセル ウェルカウセン氏)

 この事例はユーザーからの発表ではなく、疲労解析ソフトのベンダーによる事例です。構造解析によって疲労評価を実施する際、このようなソフトがない場合は「荷重をどのように想定するか”と“解析の結果得られた応力やひずみの値(分布)をどのように評価するか」はユーザーサイドに求められています。疲労解析ソフトは、これらのユーザーの負担を低減するために開発されており、近年データの充実度が増し、溶接など特殊な評価にも対応できるようになってきています。DSが実施したアンケートでも、最適化に次いで関心の高い話題となっており、2014年傘下に収めた「fe-safe」という疲労解析ソフトも同じ機能を持ったソフトとなります。

 この発表では、自動車用エンジンマウントが、路面を走るときに発生する3次元的かつ時間的変化する複雑な振動を受けた場合、どの程度健全性を保つのかをソフトによって評価しています。ソフトベンダーによる発表なのでうのみにはできませんが、3ケース実施して疲労寿命の予測が実験と25%程度の差異というのは、事前評価を行うレベルとしては十分なものと考えられます。


ユーザーの関心領域に対するDSによるアンケート結果(疲労、破壊の評価に高い関心が集まる)

 他にもこのように実験や実測データとの対比を行っている発表は今回多く見受けられ、「CAEによって現実を精度よく予測し、製品開発に役立てる」ことは、現在われわれも取り組んでいるところですが、各社苦労されながらも広まりつつあるようです。

マルチフィジクス関連、CFDや他ツールとの連成

 Abaqusなどのいわゆる構造解析系のソフトは材料力学(変形や剛性、強度評価等)を主として扱いますが、流体力学を扱うCFD(Computational Fluid Dynamics)や電磁力学を扱う電磁場解析などはもともと扱う力学や物理現象が異なるため、おのおの独立してソフトの開発がされ発展してきた経緯があります。筆者は専門外なので突っ込んだ記述は控えますが、近年これらのツールと構造解析を連成させる手法やインタフェースが発展しており、複合的な領域が同時に解析できるようになりつつあります。Simuliaの製品もAbaqusだけでなく、他のソフトを取り込んで連携を強化するという戦略が示されており、スケール的な軸を加えて2次元的なものとなっています。さらにはバイオや化学系の分野にも進出しようとしており、これだけ見ればCAEソフトのデパートの様相ですが、解決したい課題に対して統一した環境で臨むことができるのであればユーザーにとってもメリットが大きいと言えます。


Simuliaブランドのソフトウェアマップ(DS提供)

 ユーザー事例ではないのですが、Simulia社が進めている「リビングハートプロジェクト」というものがあり、興味を引いたので紹介します。これは人間の心臓の動きを物理モデルを含めてモデル化(CGではなく、神経を含めてモデル化し、電気信号によって心筋を動かすという物理現象をちゃんと解いているとのこと!?)し、病気の早期発見や手術機器の開発に活用しようというものです。電気(神経)と構造(筋組織)、流体(血液)の連成問題を同時に解くということが現実レベルになっているということに驚きを覚えました。


リビングハートプロジェクトによる心臓の動作モデル(DS提供)

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