「NX」の戦略を紹介――タッチパネル操作やCAEで点群利用のデモも:Siemens PLM Connection Japan 2015(2/3 ページ)
シーメンスPLMソフトウェアはユーザーイベントの中で、「NX」の最新バージョンである「NX10」の新技術や開発方針、製品ラインアップの強化などについて語った。
LMSによりライフサイクルが補完される
NXのCAE分野については、シーメンスPLMソフトウェア ソリューションコンサルティング部 上席コンサルタントの佐藤英一氏が、開発の方向性や2013年に行ったLMS International(以下、LMS)の買収によって可能になること、現在最新の取り組みなどについて語った。
シーメンスはLMSを2013年に買収しており、ラインアップにLMSのツールが加わることによって、モノづくりのライフサイクルを上流から下流までカバーできるようになるという。製品を作る際、CAEを活用しながら設計を行い、プロトタイプで確認した後、製造へとつなげることになる。その中で欠けていたのが、プロトタイプを作った後の実験・計測の部分だったという。LMSは、試験・シミュレーションツールを提供しており、従来NXが持っていなかった部分を補完できる。
また、もう1つ補完できる部分が、設計を始める前の工程だという。CADモデルが存在しない時点で性能を検討したい場合、シンプルなモデルを使うしかない。その部分が「1D」といわれている部分になる。この箇所についてもLMSが提供できる。「実験計測の部分は彼らの技術と組むことで、工程がぴったりとつながった」(佐藤氏)。
佐藤氏は一連の工程を、洗濯機のデモを見せながら紹介。洗濯機の回転している軸がガタガタと騒音を出す例で、回転軸に掛かる力は機構解析によって計算できる。軸に加わった力は外周のパネルなどを通じて外に音圧として出て、これが騒音になる。そのため、次に有限要素の振動解析をつなげなければならない。ここから出てきた放射パワーを今度は騒音解析につなげる。この場合、3つのソフトウェアが連動して動かなければならない。LMSを買収する前は、機構解析と騒音解析はあるが、その間に必要な有限要素解析がなかったため、どうしても他社のものをつなぐ必要があった。これがNXで完結できるようになるということだ。
また、LMSは非線形のテクノロジを多く持っており、通常は硬いものをつなげる機構解析に柔らかいものを導入でき、クラックの広がりや接着材料の剥離といった、シミュレーションが難しいとされる現象についても可能になるということだ。「大きな企業同士がソフトウェアを統合していくため時間がかかるが、今後も取り組みを加速していく予定だ」と佐藤氏は説明する。
NX CAEでは複合領域解析にも対応しており、「NX Nastran(SOL401)」と「NX Thermal」の熱・非線形構造連成解析が可能になっている。これは複数のソルバを連携させるために開発されたミドルウェアのMPドライバにより可能になった。「われわれの開発方針としては、1つのプログラムの中に全部入れるということはやらない。例えば、構造と流体をマトリックスのレベルに落とし込むと、全く性質が異なるからだ。そのため、別のソフトに接続させる形を取る。最終的には他社のソルバやユーザーのソルバとも連成できるように展開できればと考えている」(佐藤氏)。
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