自動車、航空宇宙に次ぐ第3の柱にロボットを! 愛知県が描く新戦略:世界を代表するロボット産業の拠点に
自動車産業を中心とした“モノづくりの県”として、ロボット製造品の出荷額でも国内シェアが約25%と全国トップの実績を誇る愛知県。同県では2014年11月に産学連携組織「あいちロボット産業クラスター推進協議会」を立ち上げるなど、県内のロボット産業の育成に注力している。2015年5月25日に名古屋市内で同協議会の第1回総会が開催された。
国内市場は2035年に約10兆円規模にまで拡大すると見込まれているロボット産業。これまで市場をけん引してきた産業用ロボットに加え、最近ではサービスロボットや介護用ロボットの市場も拡大の動きが進みつつある(関連記事:サービスロボット、2020年に1兆円超え規模に)。このように医療・介護・生活などロボットの活用領域が広がり「第3次ロボットブーム」とも呼べる波が訪れる中で、ロボット産業のさらなる育成に積極的な姿勢見せているのが愛知県だ。
自動車産業を中心に製造業が盛んな愛知県は、ロボット製造品の出荷額でも国内シェアが約25%と全国トップの実績を誇る。2014年11月にはこうした実績を支える県内のモノづくり技術や人材を活用して、産学連携の体制でロボットの研究開発や生産の拠点の形成し、ロボット関連の新技術や新製品を創出すること目的に「あいちロボット産業クラスター推進協議会」を設立している。2015年5月25日には、名古屋市内で第1回となる総会が開催された。
総会では今後の取り組みについて説明が行われた。同協議会には2015年5月時点で、ロボットの開発側と利用側の双方に加え、導入を支援する側など、209のさまざまな立場の企業や団体、大学機関が参画しているという。具体的な取り組みについては、医療・介護、製造・物流、無人飛行ロボットの3つ分野ごとに設置しているワーキンググループ(WG)の下で進められる。WGごとに産学連携の体制で、ロボットの開発および実用化に向けた課題の検討や、ビジネスモデルの構築といった取り組みを進めていく。
昨今、ドローン(無人航空機)の規制の有無が議論されているが、新たなロボットの開発/実用化に向けてには法規制を緩和した実証地域の確保といった、ロボット産業を取り巻く環境の整備も重要になる。愛知県はこうした環境面の整備も進めており、同県は2015年3月に政府が定める「国家戦略特別区域」に指定されている。
さらに2015年8月には医療・介護向けロボットを開発する企業と、その使い手となる施設の両者のサポートに向け「健康長寿支援ロボットセンター」内に、ロボットの実証や試用が行える場として「あいちサービスロボット実用化支援センター(仮称)」を開設する。また「愛・地球博記念公園」をロボットの実験の場として提供するといったサポートも行っている。
安倍政権が日本再興戦略の一環として2015年1月に「ロボット新戦略」を発表し、同年5月15日には同戦略の実現に向けた推進母体となる「ロボット革命イニシアチブ協議会」が設立するなど、盛り上がりを見せるロボット産業。ロボット産業クラスター推進協議会の会長を務める愛知県知事の大村秀彰氏は、第1回の総会で「ロボット産業を自動車、航空産業に次ぐ愛知県の第3の大きな柱となるように育成していきたい。こうした活動の中で得られた成果をもとに、政府が進めている取り組みに対しても現場視点の提案を行い、愛知県を日本、そして世界を代表するロボット産業の拠点にすることを目指していく」と意気込みを語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「ロボット新戦略」が生産現場にもたらす革新とは?
日本再興戦略の一環として策定された「ロボット新戦略」は、2015年5月15日に新設される「ロボット革命イニシアティブ協議会」により、実現に向けた活動に入ることになる。本稿ではロボット新戦略が生産現場に何をもたらし、どういう方向性になるのかを解説する。 - ロボット産業の立ち上げには、「ロボットのエコシステム構築」が必要だ
政府「ロボット新戦略」の実現に、官からの起爆剤を求める声もある。経産省所轄の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が手掛ける、ロボット革命実現に向けての取り組みを聞いた。 - 「ロボット革命」と「3つの世界一」、政府「ロボット新戦略」を読み解く(前編)
日本再興戦略の一環として開催されていた、有識者会議「ロボット革命実現会議」の議論結果が公開された。前後編に渡り、その提言書を読み解く。