製造業向けIoT活用入門:カーテレマティクスの事例から学ぶ(2/5 ページ)
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)に注目が集まる一方で、製造業がIoTを活用するための道筋は見えづらい状態にある。本稿では、幾つかの代表的なIoTの活用シーンを紹介するとともに、自動車向けテレマティクス(カーテレマティクス)を具体的な事例として、製造業がIoTから得られるメリットについて解説する。
(2)ウェアラブルデバイス
スマートフォンやタブレットに次いで今後ますます普及が進むといわれているのが、「ウェアラブルデバイス」です。フィットネスやヘルスケアを目的として身体状況や運動量を記録する健康機器は既に多くの種類がリリースされていますし、ウェアラブルカメラやスマートウオッチ、スマートグラスなどさまざまなデバイスが発表されています。
最近では、リング型やイヤフォン型、水泳用のゴーグルに取り付けるもの、靴のインソールに埋め込むものまで現れています。靴やシャツにセンサーを埋め込んでスポーツ選手のフィジカルデータを分析するなど、スポーツビジネスにおけるIoTの活用は今後ますます普及するとみられています。将来的には、皮膚に張り付けたり、体内に埋め込むタイプのデバイスも登場するでしょう。
ウェアラブルデバイスは、製造業に変革をもたらします。ウェアラブルデバイスが大量に生成するセンサーデータをマーケティングに活用できるようになるのです。
例えば、スポーツ選手のフィジカルデータをリアルタイムに分析すれば、コンディションの把握やマネジメントといったユーザーの行動パターンの見える化が可能になります。また、デバイス自体の稼働状況や、インストールされたアプリの稼働状況を分析することで、どれくらい使われているか、電池の持続時間はどれくらいなのかといったデバイス自体のコンディションを把握できるようになり、設計時の仕様の確認、製品の品質管理、次世代製品へのフィードバックが可能になります。
ウェアラブルデバイスの先進国である米国では、デバイスメーカーは激しい生存競争にさらされています。モノ(製品)を作って販売すれば終わりではなく、モノとサービスを継続的に磨いていかなければ、消費者はすぐに新しいデバイスに飛び付いてしまうからです。電気自動車で有名なTesla Motors(テスラ)は、電気自動車の購入後であっても、ソフトウェアのアップデートを行うことで機能改善を継続的に行うと宣言しています。このような状況は、日本にも例外なくやってきます。
PCやスマートフォンだけではなく、購入後に機能の改善、追加が行われるデバイスは激増するでしょう。競争の中で生き残るためには、製造業もIoTの活用やビッグデータ分析が不可欠です。
(3)工場などの製造ラインにおける各種センシングデータ
工場の製造ラインにおいても、IoTの活用は重要です。
例えば、工作機械メーカーから見ると、工場で使われる工作機械や組立機械は、消費者向けと同じ製品です。各種機器の稼働状況をデータとして逐次収集できれば、ラインの最適化、予防保全などに生かすことができます。
現状では、工場のネットワーク環境を厳しいセキュティの管理下におき、データの収集・分析よりも設計データの機密保持に重点がおかれるという話をよく聞きます。また、データ活用の検討を始めた段階であっても、機械ごとのデータ形式が一様ではないため、データの活用は容易ではないともいいます。工作機械メーカーが同一機種のデータを複数の工場から収集する、使われている機械のデータを工場単位で一括して分析するなど、IoT活用のアプローチもいろいろ考えられます。
製造ラインを流れるモノ(仕掛品)の管理にIoTを活用することもできるでしょう。非破壊検査など、仕掛品も各種センサーによって常時監視されていますが、その結果を収集・保管しておき、歩留まりの傾向を見たり、検査をクリアしているにも関わらず発売後に故障してしまった製品の製造状況をさかのぼって分析することによって、検査のしきい値の変更や各種機械のキャリブレーションなどを改善できれば、製品の品質向上に直結できるはずです。実際マツダは、どのドリルで穴を開けたのかまでデータとして保存しているそうです。
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