製造業向けIoT活用入門:カーテレマティクスの事例から学ぶ(1/5 ページ)
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)に注目が集まる一方で、製造業がIoTを活用するための道筋は見えづらい状態にある。本稿では、幾つかの代表的なIoTの活用シーンを紹介するとともに、自動車向けテレマティクス(カーテレマティクス)を具体的な事例として、製造業がIoTから得られるメリットについて解説する。
ビッグデータの1つの形態としてIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に注目が集まっています。IoTの流れは製造業にも大きな変革をもたらすことになるでしょう。ここでは、事例も交えながら、製造業へのIoTの活用方法を紹介します。
ビッグデータとIoT
IoT(Internet of Things)を直訳すると、「インターネットにつながるモノ」となります。ここでは、IoTを「情報(データ)をリアルタイムに収集して一元的に蓄積・管理し、そのデータを分析して、業務や生産ラインの効率化・予防保全や新商品開発・マーケティングへ活用する一連のサービス体系」と定義します。
かつてインターネットにつながるモノはPCだけでした。しかし現在では、私たちの身近にあるさまざまなモノがインターネットにつながっています。現在、その代表にあげられるのは、爆発的に普及しているスマートフォンといえるでしょう。最近では、自動車やビーコン、環境センサーといったさまざまなデバイスにもインターネット接続が普及し始めています。それらの「モノ」は、毎秒膨大なデータを生成するのが特徴です。
IoTのさまざまな活用シーン
IoTの活用シーンはさまざまです。ここでは、その代表的な例を紹介します。
(1)テレマティクス
Telecommunication(通信)とInformatics(情報科学)を組み合わせた造語である「テレマティクス」は、自動車などの移動体に通信システムを組み合わせることで実現した、リアルタイムの情報サービスのことです。これは、モノ(完成品)の販売だけにとどまらず、販売後のサービスもビジネスの対象になるモデルの出現を、IoTが後押ししている好例といえます。
テレマティクスの分野では、コマツの建設機械の遠隔管理システム「KOMTRAX」や、General Electric(GE)のジェットエンジンの監視システムなどが有名です。また、農業機械メーカーも自動運転などを含めたIoT関連技術の開発を加速させています。利用する時期が限られている農業機械は、その稼働を保障するためのモニタリングに活用できるテレマティクスサービスは欠かせないものとなるでしょう。自動車業界でいうアフターマーケットにも大きく影響すると思われます。
タンカーなどの船舶事業にもテレマティクスを応用できます。例えば、船舶の航行において、多少の遠回りをしたとしても、長い航海では波の穏やかなところをいかに進むかが燃費効率にとって非常に重要になります。航海する時間と距離、天気に依存する波の状況と、船舶のエンジンなどの稼働状況(テレマティクスデータ)と照合することで最適な航路を決定できれば、燃料のコスト削減につなげられます。船舶のようなそれぞれが個別の動きをするような機器に関してはテレマティクスの応用事例は多く、これからも期待が集まるでしょう。
テレマティクスデータを活用したサービスは、モノ(建機やトラクター)の販売や消耗品に代表されるMRO(Maintenance, Repair and Operation)の収益というよりも、成果を出し続けるために必要な稼働を保障するような、または成果に依存した「サービス」で稼ぐ時代が到来すると思われます。
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