誰のためのモデルベース開発?:モデルベース開発奮戦ちう(12)(5/5 ページ)
モデルベース開発の新人教育を無事に終え、既に社内で経歴を積んだ技術者向けの社内教育を始めることになった京子たち基盤強化チーム。そこで、部門間の壁という大きな課題に突き当たることに。モデルベース開発を導入するのは、一体誰のためなのか。最終回の今回も難問続出。最後に京子が見せた涙の意味は?
まだまだモデルベース開発は終わらない
三立精機でモデルベース開発への取り組み開始を宣言してから早くも5年が経過した。制御設計チームが手掛けた「CVT∞」を搭載する「バンビーナ」は、発売から現在まで、女性を中心に順調な売れ行きを維持していた。
試行錯誤を重ねた社内教育の成果もあってか、MATLAB/Simulinkの契約ライセンス数もさらに増え、多くの部署でモデルベース開発が推進されていた。
その日は、基盤強化グループで定例のミーティングが行われていた。
本日は、Windows XPのサポート終了と、それに合わせたWindows 7への移行を中心課題として話い合いを行いたいと思います。
将来を見据えたMATLAB/Simulinkのバージョン選定の件ですか?
それもあるけど、既存のモデルとの共存とか、頭の痛くなる話がテンコ盛りだよ。
最新バージョンの新機能が使いたくて、バージョンアップを勝手に行っている部署もあるみたいです。全社で同一のバージョンを使うって決めていたはずなのに。
まあまあ。愚痴を言っても何も変わりませんよ。これからどうするかを話し合いましょう。
課題は、まだあります。
何かしら?
自動車向け機能安全規格のISO 26262です。随分前から話は聞いていましたが、いよいよ日本のサプライヤにも適用が始まるようです。早めに動き始めなければ、手遅れになると思います。
ISO 26262への対応も急ぐ必要がありますね。
猫の手も借りたいぐらいです。分業して進めるんですか?
すぐに分業に走ると、後で手戻りが発生するケースが多いわ。課題を共有化して整理することが第一歩。そこから最も合理的な対策を導けます。何を対象として、どのような視点で課題を洗い出すのかを共有化しておくことが重要よ。
関係者と情報を共有化することから始めるアプローチは、モデルベース開発と同じですね。
山より大きなイノシシは出ないと言うし、頑張って1つ1つ解決して行きましょう。
私、前のめります!
京子! 京〜子っ! あんた、なに泣いているのよ?
何この子、きもーい〜。
(あれ、私なんで泣いてるんだろう……)
はやく、どうやってバンビーナを開発したのかを聞かせてよ〜。
そうだ。私は友人たちとの女子会の最中に、バンビーナの開発と、モデルベース開発を手掛け始めたころ、苦労していたころについて思い起こしてたんだ……。
ごめんごめん! びっくりさせちゃった? 実はね……
いつ終わるかともしれない楽しい女子会は続く。
5年後、10年後、私たちはどんな話をしているんだろう? 恋愛? それとも家庭?
でも、今私がモデルベース開発に夢中になっている、ってことだけは確かだ(連載完)。
執筆者プロフィール
JMAAB/今さら聞けないMBD委員会
JMAABのWebサイト http://jmaab.mathworks.jp/
モデルベース開発(MBD)を発展させるべく、自動車メーカーとサプライヤからなる団体『JMAAB』は13年前(2001年)に生まれました。このJMAABの10周年記念において、「MBDを分かりやすく伝えたい」という目的で発足したのが『いまさら聞けないMBD委員会』です。委員会メンバーが所属する10社でMBDを推進してきたエンジニアが協力し、これまでの経験や将来の夢を伝えるべく推敲を重ね、本連載は完成しました。皆さまのモノづくりの一助となれば幸いです。
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