連載
第32回 損失の解析:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(2/3 ページ)
実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第32回は、前回説明した損失について計算する「損失の解析」について取り上げる。
2.金めっき配線
銅は酸化しやすく時間がたつと表面が酸化してしまいます。レジストには、部品をはんだ付けする時にはんだブリッジを防ぐ目的もありますが、この酸化を防ぐという目的もあります。
エッジコネクタなど、導体どうしの接触で接続を取る場合、銅箔のままでは表面が酸化してしまい、接触不良が発生します。このため、コネクタには酸化が生じない金を銅の表面にめっきします(図8)。
導体表面に金をめっきする場合、銅と金は直接めっきできないので、銅の上にニッケルめっきを施し、ニッケルの上に金を被せます(図9)。
ところが、銅や金は非磁性体でニッケルは磁性体なのです。
磁性体に高い周波数の電流を流すと磁界が生じます。この磁界は表皮効果の原因となっています。
表皮深さdを求める式は次のようになります。
この式では、
- fは周波数、
- μは導体の絶対透磁率
- kは導体の伝導率
をそれぞれ表しています。
この式からも分かるように、透磁率μが大きくなると、表皮深さは浅くなります。
銅とニッケルの空気の透磁率を1とした比透磁率は金と銅は約1、ニッケルは約600です。ニッケルは銅に比べ、表皮深さが大幅に浅くなり、抵抗値が大きくなります。
基板に使う一般的な金めっきの厚さは、ニッケルが数μm、金は0.01〜0.1μm程度ですが、各社の工程や仕様によってその値には大きな違いが出ます。
このように、金めっきされた配線は、銅、ニッケル、金の抵抗率の違い、ニッケルの磁化による表皮深さの変化など複雑な損失が現れます。
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