モデルベース開発って、どう教えればいいの?:モデルベース開発奮戦ちう(11)(3/3 ページ)
全社のモデルベース開発におけるライセンス管理やデータマネジメント、そして教育を目的とした基盤強化チームに選ばれた京子。まずは、最大の課題と感じていた、モデルベース開発を知ってもらうための教育カリキュラム作りに取り組むことになった。
新入社員教育で活用してみると……
モデルベース開発の教育カリキュラム策定が一通り終わったころ、ちょうど新入社員の初期教育が終わる時期に入っていた。そこで、この教育カリキュラムを使って、新入社員にモデルベース開発の教育講座を実施することになった。
まずは各人に、ETSS-JMAABベースの自社スキル評定を行った。そして、LEGOを使った教材も活用することにした。
今年の新入社員は100人あまり。その中には海外からのインターン学生も含まれている。さすがは最近の新入社員だけあって、ツールの使い方はお手のもので、覚えも早い。大学の研究室でMATLAB/Simulinkを使っていた新入社員も多くいるようだ。
しかしながら、作成してもらったモデルを見る限り、手放しで喜べない状況である。ガイドラインを基にして、モデルの書き方に関する教育にも力を入れる必要があるように感じた。
LEGOを使った教材は、開発プロセスにおけるモデルベース開発の恩恵を学ぶために用意したものだ。しかしやはりそこは新人。要求事項を整理することも無いまま、いきなりモデルを作成して、コード生成を実行。すぐさま、LEGO本体にコントロールモデルを転送し、実機確認を行ってしまう。
確かにLEGOだと、すぐにコントロールモデルを転送して、動かせちゃうんだよね。でも、モデルベース開発だからこそ、コード生成する前にバーチャルでしっかりとテストをしてほしいなぁ……。
新入社員の取り組み方を見ていて、大島さんも同じことを思ったようだった。
確かにそうだ。でもやっぱり簡単に実機で確認できるから、動かしてしまうよな。短時間の講座で、モデルベース開発を適用した開発プロセスの恩恵まで分かってもらうのは、なかなか難しい。教育カリキュラムを練り直すか。
教育カリキュラムの創意工夫は、まだまだ必要だと私たちはあらためて感じていた。でも、新人の時にしっかりと教育しておけば、今後の飛躍的なモデルベース開発の技術力の向上が期待できるだろうということも同時に感じていた(以下、次回に続く)。
執筆者プロフィール
JMAAB/今さら聞けないMBD委員会
JMAABのWebサイト http://jmaab.mathworks.jp/
モデルベース開発(MBD)を発展させるべく、自動車メーカーとサプライヤからなる団体『JMAAB』は13年前(2001年)に生まれました。このJMAABの10周年記念において、「MBDを分かりやすく伝えたい」という目的で発足したのが『いまさら聞けないMBD委員会』です。委員会メンバーが所属する10社でMBDを推進してきたエンジニアが協力し、これまでの経験や将来の夢を伝えるべく推敲を重ね、本連載は完成しました。皆さまのモノづくりの一助となれば幸いです。
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