EMS大手の新金宝グループは、なぜ3Dプリンタを自社ブランドで展開するのか:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
「生産拠点としての中国」を取り巻く環境が変化する中、台湾系EMS企業を取り巻く環境も変化が進んでいる。その中でいち早くグローバル生産体制を構築し製造業の「グローバル最適地生産」の支援を進めているのが新金宝グループだ。同グループはEMSでありながら、3Dプリンタや植物工場などで独自ブランド製品を展開するなど先進的な取り組みを見せる。同グループCEOの沈軾栄氏に話を聞いた。
なぜ自社ブランド製品を展開?
MONOist 主力であるEMS事業と自社ブランドで展開する3Dプリンタや植物工場のすみ分けについてはどう考えますか。
沈氏 EMSやODM事業と自社ブランド事業は併存できるものだと考えている。ただ、あくまでも主力と考えているのはEMS・ODM事業だ。自社ブランド製品の展開も最終的にEMS・ODM事業にどう効果を反映させるかということを考えている。
実は3Dプリンタへの参入時には、われわれのEMS・ODM事業におけるユーザー各社に「一緒にやりませんか」と提案を行った。数社に話をしたが当時は市場も小さく、提案に乗る企業はなかった。しかし、チャンスはあると考えて、単独で進出することにした。現在でもXYZprintingで展開している3Dプリンタのノウハウを生かして、EMS・ODM事業に水平展開することを目指している。
ノートPCやテレビ、モバイル機器など、既に“古い”技術となった領域で自社ブランド製品を展開することは考えていない。あくまでも“新しい”領域で「トライファースト(まずやってみる)」ことを目指す。技術領域として考えているのも「自動車」「ロボット」「IoT」「ビッグデータ」などだ。
これらの領域でまず自社ブランド製品で参入し、ノウハウや知見を積む。そして、市場で実績を作り、それをEMS・ODM事業で顧客に提供していくというビジネスモデルを考えている。
MONOist あくまでもEMS企業の立場を基軸とし、そこから脱却を目指すというわけではないのですね。
沈氏 明確に「違う」といえる。現状では、ベースはEMS・ODM事業で、それを強化するための自社ブランド製品の展開という位置付けだ。
現在は前後20年を見渡してもテクノロジーが大きな変化を迎える変遷期にある。これから3〜5年の間に人々の生活は大きく変わるだろう。多くの企業にとってはこれは大きなチャンスだ。この変化の後に現在の大企業で存在しなくなっているところもあるかもしれない。また、今生まれたばかりの企業が、アップルやグーグルのように誰でも知っている大企業になっているかもしれない。そうしたチャンスの時期にある。われわれ自身がそのチャンスをつかむとともに、そのチャンスをつかもうとする企業を支援できる存在になれればと考えている。
関連記事
- iPhoneを製造するフォックスコンは、生産技術力をどこで身に付けたのか?
エレクトロニクス製造・実装技術展「インターネプコン ジャパン」の特別講演としてフォックスコンの技術顧問で、ファインテック代表取締役社長の中川威雄氏が登壇。「世界No.1 EMS “Foxconn”のビジネス戦略」をテーマに同社の強さの秘密と今後の課題について語った。 - 進撃の国産EMS、沖電気が描く日本型モノづくりの逆襲
国内工場が逆境に立つ中で“製造現場の強さ”そのものを武器とし、国産EMSとして業績を伸ばしているのが、沖電気工業 EMS事業本部だ。最後発の国産EMSとして成功した秘密はどこにあるのか。また日本型モノづくりの勝ち残る道はどこにあるのか。沖電気工業 常務執行役員 EMS事業本部長の清水光一郎氏に話を聞いた。 - 3Dプリンティング技術で生活を豊かに――パーソナル3Dプリンタ市場に攻勢をかけるXYZprinting
パーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチシリーズ」などを手掛ける台湾XYZprinting。新製品を立て続けにリリースした2014年に引き続き、2015年も製品ラインアップを拡充していくという。同社日本法人であるXYZプリンティングジャパン マーケティング部 マネージャーの新井原慶一郎氏に、今後の製品戦略やフードプリンタの取り組みなどについて伺った。 - 「工場立地」面から見たアジア各国の特性と課題
長年生産管理を追求してきた筆者が、海外展開における「工場立地」の基準について解説する本連載。2回目となる今回は、工場を立地するという観点で見た場合のアジア各国が抱える特性と課題について解説する。 - キーワード「EMS」
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.