量産で先行するトヨタが燃料電池車普及に向けて見せる本気度:燃料電池車ビッグ3 講演リポート(1)(2/3 ページ)
ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第1回はトヨタ自動車の河合大洋氏による講演だ。
燃料電池セルの流路構造を改善
ミライは、自社開発の新型燃料電池セルスタック「トヨタFCスタック」や耐圧70MPaの高圧水素タンクなどで構成する燃料電池技術と、高い販売実績を有するハイブリッド車の技術を融合した「トヨタフューエルセルシステム(TFCS)」を採用している。内燃機関に比べてエネルギー効率が高く、加えて、走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない優れた環境性能を実現するとともに、3分程度の水素充てんで十分な走行距離を得られるなど、ガソリンエンジン車と同等の利便性を備えた。
また、一目でミライと分かるデザインや、モーター走行による優れた加速性能と圧倒的な静粛性、低重心化などによって実現した走りの楽しさも特徴となっている。停電や災害などの非常時に使える大容量外部電源供給システムや専用通信サービスの設定など次世代車にふさわしい価値も提供している。
このうち燃料電池セルについて河合氏は「今回、燃料電池セルの流路構造を大きく改善したところが大きな特徴だ。従来は、燃料電池セルに広く用いられている溝型の流路を使って水素や空気を流していたが、流路のリブ幅が大きく生成した水がたまって十分に酸素が供給されないという課題があった。これを解決するために開発したのが3Dファインメッシュ流路だ。酸素を電極全面に行き渡らせることができ、セル面内の均一な発電を実現した」とし、発電性能の向上を第1のポイントに挙げる。
さらにMEA(膜電極接合体)そのものの性能を高めた。電解質膜を3分の1に薄膜化して、ガス拡散層の拡散性も2倍にし、触媒の高活性化も合わせて電極反応性能の大幅な向上を実現した。燃料電池セルの電力密度は、FCHV-advに用いた2008年型に比べて、2.4倍となっている。
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