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ちょっと珍しい“ハードウェア主導型”IoT団体「IP500 Alliance」IoT観測所(7)(2/3 ページ)

IoT団体の多くが標準を作り、そこからソリューションにつなげる手法を採るのに対し、ヨーロッパ発の「IP500 Alliance」はハードウェアありきというユニークなアプローチでエコシステムを形成しようとしている。

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認証サービス企業との協業

 さて、この辺までであれば他の標準規格で代替出来ないという訳ではない。確かに到達距離に関してはちょっと独特だが、OCIの様に複数の通信手段をサポートする規格もあるから、やろうと思えば何とでもなる訳で、差別化要因としてはやや弱い。そこで、これをカバーするための手法が、TUVとの協業である(Photo09)

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(Photo09) CoreNetiXの話は後述。豊田通商の名前が出てくるのは、日本向け記者説明会用のサービス、と考えておけばよいかと思う

 TUVという会社、日本ではなじみが薄いかもしれないが、世界的な技術・安全・証明サービスを提供する会社であり、日本でも横浜・大阪・福岡に拠点を置いている。具体的なサービスとしては、日本の場合だと携帯電話などでおなじみ「技適」の実施がある。これは技術基準適合証明ないし技術基準適合認定のどちらか(もしくは両方)を取得している事を示すもので、これがないと国内で利用できないわけだが、この両方を提供するサービスをTUVは行っている。

 あるいはISO 9001(品質管理)やISO 14001(環境マネジメント)などは耳にした事のある読者は多いかと思う。最近だと自動車のADAS(機能安全)に関連してISO 26262の取得が欠かせなくなっているが、この認証サービスを初期から提供してきたのがやはりTUVである。

 ではTUVが絡むと何が開発者にとってうれしいのか?というと、検証やテスト、認証取得の手間を大幅に削減できることだ。「特定の顧客のみが使う」製品であれば、別にその顧客の受入テストをパスすれば済む話だが、ビルディングオートメーションなどのように幅広く利用されるデバイスであれば、当然要求される認証を取得しておく必要がある。

 日本であれば、通信に関しては技適の取得が必須だし、他にJISやPSEといった適合性の認証も必要だ。国内だけで流通する製品ならそれでもよいが、海外に販売される可能性がある場合は、それぞれの国向けにやはりそれぞれの認証が必要である。昨今のスマートフォンが、認証マークてんこ盛りになっている現状を見ればこれは一目瞭然かと思う(Photo10)。

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(Photo10) マーケットの拡大や製品の高機能化に伴い、認証取得の負担が増している

 これを各メーカーが自力でやるのは(よほど大きな会社ならともかく)普通は大変である。そこでTUVはこうしたメーカーに対して、ワンストップの形でテストとか検証、認証取得までのサービスを提供することになるから、少なくとも自身で全部やるよりは大幅にコスト削減になるし、手間が省ける。

 実のところこうした認証の場合、テストやらなにやらよりも必要となる文章類作成で手間取る事が少なくない。TUVはこうした事に長けているから、文章の作成時間も最小で済むわけだ。

 IP500 AllianceはこのTUVをAllianceに巻き込んだ事で、テクノロジーの提供に加えて開発コストと開発期間の短縮、という他の標準化団体ではあまり見かけない差別化要因を手に入れたわけだ。もちろん、TVUの側としても、これにより新しいテスト・認証サービスの需要が立ち上がるのは喜ばしいことで、関係する全員にとってメリットがある、という構図である。

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