水産業にも広がるICT活用、NECが“フィッシュカウンター”を開発:製造ITニュース
NECソリューションイノベータは、2015年4月よりスマートフォンを利用した水産養殖業向けの魚類カウントシステム「NEC フィッシュカウンター」の提供開始を発表。水産業に対してICTを活用した支援の動きが広がっている。
就業人口の高齢化による後継者不足、低価格な輸入品との価格競争など、厳しい状況に置かれている日本の水産業に対してICT(Information Communication Technology)を利用した支援の動きが広がっている。NECソリューションイノベータは2015年3月17日、同年4月よりスマートフォンを利用した水産養殖業向けの魚類カウントシステム「NEC フィッシュカウンター」の提供を開始すると発表した。
NEC フィッシュカウンターは、スマートフォンにインストールした専用のアプリケーションを利用して、透明なパイプの中を流れる魚の数を自動でカウントできるシステムだ。購入した魚を養殖業に投入したり、移送する際に利用できたりする。同社の画像認識技術を使用しており、カウントの誤差率は±5%だという。
携帯性の高いスマートフォンを使用するため、屋外の養殖現場や船上など、さまざまな状況で利用できるというメリットもある。またこうした作業環境に合わせて、パイプの認識範囲や魚が流れる向きの設定変更も可能だ。事前に魚の数を入力することで、移送作業にかかる時間を自動予測する機能も備えた。
水産養殖業の現場では、稚魚を目視でカウントするなど勘と経験による作業が行われており、正確な飼育量や管理が難しいという問題がある。正確な飼育量が把握できなければ、必要な餌の量や出荷量など、生産コストや売上高の予測が行えないという課題につながる。NEC フィッシュカウンターはこうした課題の解決に向けて開発したシステムだという。1端末当たりの1日の利用料金は3万円で、同社は今後5年間で5000ライセンスの提供を目指すとしている。
NECソリューションイノベータは、2014年10月に水産養殖向けのサービス「NEC 養殖管理ポータル」を発表している。これは東京海洋大学と共同開発したもので、水産養殖における飼育業務の記録、リアルタイムなモニタリングやデータ分析が行えるクラウドサービスだ。同社は今回発表したNEC フィッシュカウンターと併せて、今後も水産養殖業に対してICTを活用したサービスの提供に注力していくとしている。
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