公差解析やコンフィグツールに注目 ――CADユーザーが見た最新3D設計ツール:SOLIDWORKS World 2015(2/3 ページ)
CADユーザーグループにも属するメカ設計者・3次元ツール推進者がSOLIDWORKS World 2015のパートナーパビリオンで見た最新3Dツールを紹介する。
一方PCBWorksは中間ファイル変換や、中間ファイルを介することなく、SOLIDWORKSとダイレクトにデータの相互受け渡しが可能ということです。その際には設計変更履歴も維持できるそうです。この辺の機能は、現在大きなシェアを占めている基板設計用CADが意識されていそうですね。
同ツールにはハーネス設計機能はなく、かつSOLIDWORKSアドインではなく、別のソリューションとしてのオペレーションになります。なおカンファレンス開催時点では、日本国内における販売代理店は決まっていないとのことでした。
ブースではPCBWorksによる、基板が配置された自動車のシャシーのデモが見られました。基板設計データについてはメカ設計者にはあまり関係なさそうだと思われがちですが、基板に関わる熱流体解析や、その周りの構造物との連成解析、製造工程などのシーンで活用の可能性がありそうです。
公差解析ツール
公差解析ソフトについては日本国内でも雑誌などで公差設計・公差解析についての技術特集を見ることも少なくありません。しかし日本では今一歩普及していないと思います。一方、海外ではその取り組みが活発であるように見受けられます。今回のパートナーパビリオンにおける展示でも日本と海外との意識の差が感じられました。
SOLIDWORKSの上位版「SOLIDWORKS Premium」には「TolAnalyst」という公差解析機能が搭載され、「最小/最大公差の評価」「平方和の平方根(RSS)による公差解析の実施」「寄与するフィーチャと公差を寄与度により分類してリストする」といった機能を有しています。最近のバージョンアップでは特に目立った機能向上もなく、必要最小限の機能追加をしているといったところです。
他に、Sigmetrix社の「CETOL 6σ for SOLIDWORKS」、Varatech社の「Sigmund Works」の展示がありました。いずれの製品もTolAnalystと比較すると高機能です。例えばCETOL 6σにはシステムモーメント法によるシミュレーション、Sigmund Worksにはモンテカルロ法によるシミュレーション機能があります。また組み立て定義のしやすさや、最適化への連携など、SOLIDWORKSデータからダイレクトに公差解析する際に便利な機能があります。それぞれのブースで、北米での公差設計についての需要について質問しましたが、いずれも「需要および製品出荷の増加」という回答でした。
これは私自身の経験からの所感ですが、量産型と異なる個別受注生産においては公差解析の重要性は認めながらも、十分にその運用が出来ていないと考えています。「試作設計→量産設計」という工程を踏まないが故に、公差を設定するタイミングが設計工程の終盤、すなわち「図面化するフェーズ」になってしまうからです。
今回、「製品開発において、構造解析などのCAEは詳細設計時ではなく、構想設計時にするべきである」といった内容の技術トレーニングセッションがありましたが、公差解析もそれと同様ではないかと思います。ガチガチの詳細設計ではなく、まだ詳細設計序盤のラフな状態において運用し、かつ便利な機能のサポートの下で運用できることによって、その運用頻度向上や効果が得られるのではないでしょうか。
設計検証(Design Validation)を推進するソリッドワークス社が、公差設計の重要性をどう考えるか、また自社ツールであるTolAnalystをどう考えるのか非常に興味深いところです。私はソリッドワークス社の「DimXpert」をキーとして、TolAnalystや「SOLIDWORKS MBD」「SOLIDWORKS Inspection」の連携が十分可能ではないかと考えています。
ブースでは聞けなかったのですが、北米や他の国のユーザーが「これらツールを使用する上で必要な知識である公差設計理論や統計学的な知識について、どのように学んでいるか」、あるいは「CAEのような妥当性の検証をどのようにしているのか」気になるところです。
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