日本の新たな宇宙計画、その背景にある安全保障と宇宙産業の関係性:宇宙開発(2/3 ページ)
日本政府が2015年1月に発表した新宇宙基本計画。安全保障分野に関する宇宙利用の拡大など、日本の長期的な宇宙政策のビジョンが示された。この計画が策定された背景について、内閣府 宇宙戦略室の初代室長を務めた京都大学の西本淳哉氏が語った。
安全保障戦略に日米関係、日本の政策と宇宙利用の関係性が深まる
西本氏は、こうした2012年7月の体制確立以降、日本の宇宙政策に影響を与えた複数のトピックについて説明した。まず大きな点が、2013年12月に策定された国家安全保障戦略で、安全保障上の観点から宇宙空間の活用を推進する方針が決まったことだ。さらに、宇宙状況や宇宙を利用した海洋監視における日米協力関係に進展が見られるなど、日本の安全保障政策における宇宙利用は確実に広がりつつある。
その一方で懸念されているのが日本の宇宙機器産業の停滞だ。2012年度の日本の宇宙産業規模は総額6兆5772億円で、その内、衛星やロケットの開発といった宇宙機器産業の規模は約3160億円となっている。西本氏は、日本の宇宙機器産業の現状について「15年前のピーク時と比較して、産業規模/人員ともに減少もしくは横ばいといった状態が続いている。ロケット打ち上げ関連メーカーの撤退により、技術力低下のおそれも懸念されている」と語る。
では、こうした日本の宇宙機器産業が停滞している原因は何なのか。現在のところ世界的に見れば宇宙機器産業は官需・軍需の売り上げが大部分を占めるが、西本氏は日本の場合、総需要の9割以上を官需であることを問題視する。「毎年の国家予算が、そのまま産業規模とほぼイコールになるという状況が続いている。しかし日本は厳しい財政制約によって、毎年の宇宙関連予算も微増といった状態。宇宙産業機器の世界市場は毎年十数%の割合で拡大している一方、このままでは日本市場の成長は見込めない状況にある」(西本氏)。
続けて同氏は「つまり、日本の宇宙機器産業における民需の割合を拡大させていかなくてはならない。ロケット開発を例に見ても、日本の打ち上げ実績は世界の4%程度にとどまっている。日本のロケットは性能の良さは世界から評価されているがあるが、価格が高いことにより競争力を欠いている面もある。米国ではSpaceXなどの民間企業が、とても安いコストでロケットを打ち上げ始めている。また、アメリカ航空宇宙局(NASA)は高度400km程度の低軌道領域の宇宙開発に関しては、民間企業に任せようという方針。宇宙産業における民需の活性化を推進している」と説明した。
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