アルゴリズムが無限のデザインを創り出す――Grasshopper使いの“3D漬け”生活:デジタルモノづくり人物探訪(2)(2/3 ページ)
3Dモデリングツールや3Dプリンタを活用し、モノづくり業界で活躍するエンジニアやクリエーターにスポットを当てる本企画。今回は「Rhinoceros」と「Grasshopper」を使ってシャツやスカート、着物作りに挑戦する小野正晴氏を紹介する。
デザイナーではなく、プログラマーのような生活!?
――「Rhinoceros」と「Grasshopper」を選択した理由は?
小野氏 RhinocerosとGrasshopperを使い始めたのは社会人になってから。きっかけは、前述のNervous Systemの作品だ。当時、ある人物から「彼らの作品はおそらくRhinocerosとGrasshopperで制作しているだろう」と教わり、使うようになった。ただ、後から調べてみるとNervous Systemは違うツールを使っていることが分かった……、だまされた(笑)。
とはいえ、Grasshopperはインダストリアルデザインの世界でもなじみのあるRhinocerosのプラグインなので、よし! やってみよう!! と本気で取り組んだ。今ではRhinocerosとGrasshopperを使って、Nervous Systemのようにシャツやスカートを作れるまでになった。ただ、彼らのようにシミュレーションを活用して、“ぐしゃり”と丸めた状態で……というのはまだ実現できていない。これは今後の課題だ。
小野氏 先ほど、アルゴリズミカル・モデリングと言ったが、Grasshopperによるモデリングは、3次元CADを使ったものとは大きく異なる。Grasshopperというプラグインのおかげで、アルゴリズムを用いて、自由曲面を含む3次元形状の生成と大量のデータ処理が行える。数式やルールを定義して、どのようなレイアウトで、どのようにパターンを配置するかをビジュアルプログラミング環境上でアルゴリズムを組み上げ、パラメータを操作することで形状シミュレーションを行い、デザインを決定できる。
ちなみに、現在制作中の「着物」は約2万個のパーツ(パネルとジョイント部)で構成されている。これを1つ1つモデリングしていたら切りがない。Grasshopperなら、対象となるサーフェス上に一気にパネルを並べて、ジョイントでつなげるというアルゴリズムを組めばいい。
――「アルゴリズム」というと、プログラミングの素養が必要に感じるが?
小野氏 そう。私自身、プログラマーでもないし、プログラミングなんてしたこともない。数学も苦手だ。だから、アルゴリズムって何? という状態からスタートした。基本的に、欲しい情報はネット検索で探すようにしているが、RhinocerosとGrasshopperに関する情報は英語のものばかり。大変だが片っ端から読みあさり、アルゴリズムをダウンロードできるものはするという感じで情報を集めている。そんなこともあり、最近は人の作ったアルゴリズムを読み解く時間の方が多いくらいだ。デザイナーというより、プログラマーのような生活を送っている(笑)。
小野氏 幸い、Grasshopperはビジュアルプログラミング環境が用意されているので、プログラミング初心者でも箱と箱をつなげるような感覚で、アルゴリズムが組めるようになっている。現在、Grasshopperを本格的に触るようになってちょうど1年くらい。やり始めて半年くらいたったころには、思い描いたカタチを表現できるアルゴリズムを作れるようになった。
自分が使い始めた当初は、周りに詳しい人が誰もいなくて本当に苦労した……。だが、最近では自分が講師を務める勉強会や他の講習会への参加などを通じて、Grasshopperユーザーとの交流も増えてきた。しかも、勉強会の参加者の中に、自分よりもGrasshopperに精通している人がいたりして(笑)。
とにかく、カタチはだいぶ作れるようになったので、次はNervous Systemがやっていたような、シミュレーションを用いて3D空間上でモノを動かすというところに挑戦したい!
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