異方性導電接続材料を使った低温接合技術:鉛フリーはんだ 講演リポート(2)
当たり前のように使われている鉛フリーはんだだが、まだ課題は多い。その鉛フリーはんだをテーマとする「第44回インターネプコン ジャパン」の専門技術セミナーに3人の専門家が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第2回は、タムラ製作所の清田達也氏による「低温接合材料による新たな実装分野への展開」だ。
最新の製造技術・実装技術の展示会「第44回インターネプコン ジャパン」(2015年1月14〜16日、東京ビッグサイト)の開催3日目に当たる1月16日、鉛フリーはんだをテーマとする専門技術セミナーが開催された。本連載では、同セミナーに登壇した3人の鉛フリーはんだの専門家の講演内容をリポートする。
第2回は、タムラ製作所の上席執行役員で電子化学事業本部副本部長/電子化学事業本部開発本部 本部長を務める清田達也氏による、「低温接合材料による新たな実装分野への展開」と題した講演の内容を紹介する。
異方性導電接続のメリット
タムラ製作所が実装分野で展開している低温接合材料には、「SAM10シリーズ」と「SMA32シリーズ」がある。今回の講演では、これらの中から、異方性導電接続材料であるSAM32シリーズについてその特徴を解説した。
異方性導電接続技術は、携帯電話機、デジタルカメラ、タッチパネルなどにおけるフレキシブル基板とリジッド基板を接続する用途で主に用いられている。その特徴となるのが、狭ピッチ対応と低背化対応の2つだ。
コネクタ部品を使った接続では、狭ピッチの場合にんだペーストを使うとはんだブリッジが発生してしまう。さらにコネクタ自体の高さによって低背化も困難になる。これに対して、異方導電接続技術は、金属粒子の大きさ、金属粒子の密度、樹脂の流動性などを適切にコントロールすることで、はんだブリッジを起こさずに狭ピッチに対応し、フレキシブル基板の厚さまでの低背化が可能になる。
異方性導電技術には、接着性、導電性、絶縁性という3つの特徴がある。つまり、これら3つの特徴をどのように確保するかが材料開発の鍵になる。清田氏は、「SAM32シリーズでは、接続箇所の高密度化と低背化を維持しながら、150℃の低温化と1MPaの低圧力化を実現するというコンセプトで開発をスタートした」と語る。
ペースト+はんだ接合の形で開始し、電極間の導電性の確保と金属の物理的な接触のため金属間をはんだ接合にすることで、低温化と低圧力化を推進した。それを行うためには、低融点はんだの使用、低温で活性化するフラックスの利用、低温で接着性を高められる樹脂の低温硬化という3つの条件が必要になったという。
SAM32シリーズの開発段階ではさまざまな困難があったようだ。主要な構成材料は、熱硬化性樹脂、フラックス、はんだ粉末である。熱硬化性樹脂は絶縁性と接着性、フラックスははんだ付け性、はんだ粉末は導電性の機能を担っている。ただし、加熱するとはんだは融点以上で容易に溶融し、樹脂(とフラックス)はフローする。適切に制御しないとはんだが凝集して、端子間にブリッジが発生し、絶縁が確保できないことになる。
この課題に対して清田氏は、「はんだの凝集を抑えてブリッジに対応すればよいということで、樹脂の流動の抑制などを行うなどの対応を進めた」と説明する。
またSAM32シリーズは、低温、低圧の環境においても、異方性導電接合材料として非常重要な接着性、導電性、絶縁性について、初期段階からの経時変化が少ないということも大きな特徴となっている。今後は顧客から要望の多い微細化への対応を目指した製品開発を進める方針だ。
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