ゲリラ豪雨対応の下水道水位モニタリング、センサー運用コストが50分の1に:防災・災害対策技術
富士通研究所は、都市におけるゲリラ豪雨などによる被害軽減に向け、ICTを活用して下水道氾濫の兆候を低コストに検知する技術を開発した。下水道水位モニタリングに用いるセンサーの設置数を約5分の1に減らす技術と、センサー1台当たりの運用コストを約10分の1に減らす技術で、両方を組み合わせるとセンサー運用コストを約50分の1まで削減できる。
富士通研究所は2015年2月10日、都市におけるゲリラ豪雨などによる被害軽減に向け、ICTを活用して下水道氾濫の兆候を低コストに検知する技術を開発したと発表した。今後はさらなる開発を進め、2016年3月までの実用化を目指す。
局所的な集中豪雨、いわゆるゲリラ豪雨による都市の浸水被害への予防策として、ICTを活用したリアルタイムの下水道水位モニタリング技術に期待が集まっている。しかし、マンホールなどに設置するセンサーの設置や運用管理に必要なコストが課題となっていた。
今回開発した技術は2つある。1つは、地形や下水道管路の形状/距離によって生じる上流から下流までの所要流水時間の分析から、下水道氾濫の兆候を精度良く検知する水位計測機能を備えたセンサーを組み込むべきマンホールの位置と数を決定する技術だ。同センサーは、回線や電源などの専用施設、電池交換が必須の無線接続のセンサーなどが必要になるため、1台当りの運用コストが高く、広域にわたって隅々まで設置するのは困難だ。開発技術を使えば、約5分の1のセンサー数で下水道全体の流れを把握/予測することが可能になるという。
もう1つは、測定水位の変化状況を考慮して、測定パラメータを最適に制御する技術だ。状況に応じた測定精度を維持しながら消費電力を約70%削減できるという。太陽光発電のような自然エネルギーだけで動作させることも可能で、この場合には1台当たりの運用コストを従来比で約90%削減できる。
2つの技術を組み合わせれば、設置するセンサーの数が約5分の1に減り、1台当たりの運用コストが約10分の1になるので、下水道氾濫の兆候を検知するのに用いるセンサーの運用コストは約50分の1にまで削減できることになる。
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