“ロボット革命”を実現する手段とは、政府「ロボット新戦略」を読み解く(後編):ロボット革命実現会議(2/2 ページ)
ロボットによる新たな産業革命を目指して開催された「ロボット革命実現会議」では、向こう5年で実行すべき具体的な計画についても議論された。本稿では“ロボット革命”実現に向けた、報告書の提案について読み解く。
法改正とロボットオリンピック
生活(市場)でロボットを活用する基盤整備として、規制緩和と法整備の必要性にも報告書では言及されている。既に産業用ロボットの80W規制緩和や生活支援ロボットの国際安全規格であるISO 13482の発行といった整備が行われているが、報告書ではこれからのロボット利活用に際してさらなる整備が必要であるとして、電波法や薬事法、道路交通法、航空法、高圧ガス保安法、消費生活用製品安全法などに改正あるいは見直しの必要ありとし、これらについては目標とするタイムスケジュールも提案されている(報告書82ページ)。
そして開催の暁には耳目を集めそうなのが「ロボットオリンピック」開催の提案だ。現在も経済産業省と日本機械工業連合会が「ロボット大賞」を共催しているが、これをさらに発展させるとともに、2020年の東京オリンピックに合わせた「ロボットオリンピック」の開催を提唱している。
ロボット的に優れたモノだけではなく、医療介護や災害対応、サービスなど、ロボット革命が目指す幅広い分野へのロボット活用のショーケースとなるべく、「実際に役に立つロボット同士を競わせ、その姿を見せる」大会にする考えだ。
6分野に設定されたKPI
ここまでは報告書にある分野横断事項について解説したが、報告書では「ものづくり」「サービス」「介護、医療」「インフラ、災害対応、建設」「農林水産業、食品産業」の6分野について、ロボット導入の方向性、2020年に目指すべき姿、目標達成に向けた施策が提唱されている。
着目すべきは2020年に目指すべき姿について数値目標(KPI)が設定されていることだ。幾つかを抜粋すると以下のようになる。
- ものづくり
製造分野で使用されるロボットの市場規模を現在の2倍、1.2兆円に引き上げ、同時に製造業における労働生産性の伸び率を年2%以上にする。また、製造上の組み立て業務におけるロボット化率を、大企業で25%、中小企業で10%にする
- サービス
非製造業分野で用いられるロボットの市場規模を現在の20倍である1.2兆円に引き上げ、労働生産性の伸び率を3倍に引き上げる(2012年の年間伸び率は0.8%)。
- 介護医療
介護ロボットの国内市場規模を500億円に拡大し、ロボット技術を活用した医療関連機器の実用化支援を2015〜2020年の5年間で100件以上実施する。
- インフラ、災害対応、建設
建設一般においては、施工プロセスへのロボット技術導入(情報化施工技術)普及率を3割とする他、インフラについては国内重要インフラの20%をロボット技術の活用で点検・補修する。
- 農林水産業、食品産業
2020年までの自動走行トラクター現場実装、省力化などに貢献するロボットを20機種以上導入する。
ロボットの本格導入がこれからと目される「インフラ、災害対応、建設」「農林水産業、食品産業」については市場規模拡大についての金額記載がなく、導入すること(導入件数)がKPIとなっているが、産業用ロボットという下敷きがある「ものづくり」、2014年後半から急激に導入の話題が増えた「サービス」「介護、医療」については市場拡大を明確に打ち出しており、施策提案についても現実的な案が多く見られる。
本提案書は政策として正式に閣議決定を得た状態ではなく、あくまで会議出席者の意見をまとめた“提案書”であることは事実だ。ただ、政府肝いりのプロジェクトであり、資料を発表した経済産業省も「ロボット革命実現に向けた施策の検討を進めてまいります」との一文を添えている。報告書の随所に見られる「2020年」まで、あとわずか5年。ロボットと言えば産業用であった時代から、大きな変革の時を迎えてることは確かだ。
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