自動運転はいつ実現? 日米欧が描くそれぞれのロードマップ:自動運転技術(3/4 ページ)
内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」において、自動運転システムの開発に取り組むSIP-adusが、欧州や米国の自動運転技術の開発における動向や、今後の研究開発の方向性について説明した。
ダイナミックマップの構築が必要不可欠に
自動運転技術の実用化に向けて、国際連携の重要性を挙げるSIP-adusは、2014年11月17〜18日に東京都内で自動運転技術の実用化に向けた国際会議「SIP-adus Workshop」を開催している。同会議では「走行環境のモデル化」「データ通信を利用した環境認識」「人と制御システムの役割」「自動運転普及の影響評価」「公共交通への適用」の5つのテーマごとに議論が行われたという。会見ではこの内、「走行環境のモデル化」と「データ通信を利用した環境認識」の議論の内容が紹介された。
走行環境のモデル化については、日産自動車 総合研究所 アライアンス第二部門 モビリティ・サービス研究所の主任研究員を務める白𡈽良太氏が説明を行った。走行環境のモデル化とは、地図情報とともに渋滞や事故などの道路状況、交通ルール、天気、路面情報などをリアルタイム表示させる、いわゆるダイナミックマップの作成を意味している。
自動運転の実用化に向けて、なぜダイナミックマップの生成が重要となるのか。白𡈽氏は「ダイナミックマップというのは、自動運転における“認知”をサポートするもの。自動運転を実現する上では、現在のGPSの精度では不十分。車両自身が、今どれくらい右に寄っているのか、この交差点を右折すると車線はいくつあるのか、その路面状況はどうなっているのかといった情報をより高精度に認知する必要がある。こうした詳細な地図情報と車両に搭載されているセンシングシステムを組み合わせることで、自動運転における認知に貢献できる」と説明する。
白𡈽氏は、SIP-adus Workshopにおける議論の内容も紹介した。米国からの「自律走行を実現する場合、車載機器には人間並みの精度で視覚情報処理する性能が求められる。しかしこれには限界があり、それを補う意味でもダイナミックマップが必要」という意見など、日欧米ともにダイナミックマップのようなデジタルインフラの整備が重要であるという共通認識があったという。その一方で、ダイナミックマップを提供する場合のコスト面での課題や、データベースの構築など、実用化に向け課題も挙げられたことを紹介した。
SIP-adusではダイナミックマップの実証実験もスタート
白𡈽氏は、SIP-adusがダイナミックマップの生成に関する実証実験を行っていることも紹介した。東京お台場地区を利用して、ダイナミックマップの生成に必要な期間とコストの検証を行っているという。また、SIP-adusでは、渋滞情報や路面情報といったダイナミックマップに必要となる基本的なデータの収集および提供方法、データの構造化といった基盤づくりに注力し、将来的にはこうしたデータを地図ベンダーなどに提供していく方針だという。
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