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ゲリラな豪雨を事前に予測! 次世代レーダー技術の開発がスタート防災・災害対策技術(2/2 ページ)

情報通信研究機構(NICT)は東京都内で記者向け説明会を開き、フェーズドアレイシステムを利用した気象レーダーの研究開発について説明。また内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」への同研究の展開内容や、今後の研究開発計画も紹介した。

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さらに高精度な次世代レーダーの開発へ

 NICTのフェーズドアレイ気象レーダーを利用した気象観測システムの開発は、内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に採択されている。SIPとは、縦割り行政による弊害をなくした府省横断型の施策であり、日本の経済・産業競争力にとって重要な10の課題がプログラムとして選定されている(関連記事:アベノミクス第3の矢を実現する10のイノベーション【後編】)。

 NICTが参加しているのは、自然災害に対処するための新技術の開発を目指す「レジリエントな防災・減災機能の強化」というプログラムだ。平成26年度(2014年度)の予算として25億7000万円が配分されている。NICTは同プログラムにおいて、東芝、大阪大学と協力してさらに精度の高い気象レーダーの開発に取り組むという。


NICTのSIPにおける次世代レーダーの研究概要(クリックで拡大)出典:NICT

 NICTらが開発した現行のフェーズドアレイ気象レーダーは、水平偏波のみを利用している。一方、先述したXRAINなどは、水平偏波と垂直偏波を同時に発射し、2つの電波の伝搬位相差などを利用してより高精度に雨量の測定が行えるMPレーダーを採用している。つまり、フェーズドアレイ気象レーダーは3次元測定の速度に優れるが、測定精度の面ではXRAINの方に分がある。そこでNICTはSIPのプログラムにおいて、現在のフェーズドアレイ気象レーダーにMPレーダーを融合させたより高精度な次世代レーダーの開発を進めているという。

 技術的な課題について「現在開発を進めている次世代レーダーは、アンテナ素子を2次元配列する。それに応じて、送受信用のチップは現在のフェーズドアレイ気象レーダーの約100倍の数が必要になるため、大きなコストが掛かる。こうした課題をチップの高集積化などによって解決していく必要があるが、こうした部分については既に東芝が取り組みを開始している」と説明した。

2020年の東京五輪では次世代レーダーによる高精度な気象予測を可能に

 高橋氏はこうした次世代レーダーの開発に加え、SIPが府省横断型の取り組みであることを活用して防災科学技術研究所や鉄道総合研究所などと共同で「豪雨竜巻予測技術」の研究開発にも取り組むと説明した。


他の研究機関と共同で次世代レーザーを活用した「豪雨竜巻予測技術」の開発にも取り組む(クリックで拡大)出典:NICT

 具体的には、NICTらが開発を進める次世代レーダーと共同研究機関が所有するその他の気象観測システムを組み合わせ、雲の発生段階から降雨までの過程をより高精度に観測できるシステムの構築を目指す。このシステムから得られた情報を、鉄道や河川管理を行う事業者や自治体に提供することで防災機能に役立てるという。高橋氏は「将来的には緊急地震速報ならぬ緊急豪雨速報のようなものが提供ができればよいと考えている」と語った。

 SIPの各プログラムは、平成26年度(2014年度)を初年とする5年計画となっている。今後の研究開発のロードマップは、平成29年度(2017年度)までに東芝や大阪大学と共同で新型の次世代レーダーの開発を行うとともに、関西地域で既存のフェーズドアレイ気象レーダーを使った実証実験を進める。5年計画の4〜5年目となる平成29〜30年度には、首都圏での実証実験をスタートさせ、開発した観測技術を2020年の東京オリンピック・パラリンピックで実際に活用することを目指す

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