RPGをクリアするまでのプロセスと生産管理:RPGで理解する生産管理(1)(2/4 ページ)
“モノを生産する”製造業にとって、生産を上手に管理し運営していく「生産管理」の手法は、非常に重要です。しかしさまざまな要素や考え方が含まれる「生産管理」は、慣れない人々にとっては理解するのが難しいものでもあります。そこで本連載では、RPG(ロールプレイングゲーム)になぞらえて生産管理を分かりやすく解説していきます。
QCDとボトルネック
より具体的に見ていきましょう。「ムリなく洞窟をクリア」「ムダな買い物や魔法の使い方を避ける」「レベルをムラなく上げていく」という作業については、「ムリ」「ムダ」「ムラ」と3つの「ム」を減らすことで、効率的に最大の効果(ストーリーの進行)を得る手法として、説明しています。実はこれは、生産管理の世界でも同様です。生産管理の世界では実際に毎日、「3ム」削減努力が行われているのです。
生産管理において「3ム」を減らすことができれば、ムダがなくなることで「コスト」を減らすことができ、ムリがなくなることで顧客の「納期」に合わせた生産体制を構築でき、ムラがなくなることで「高い品質レベル」を実現することができます。つまり「3ム」を撲滅するということは、「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」の「QCD」を追求するということを示しているといえます。この「QCD」を追求し、より高いレベルに引き上げていくことが、製造業としての競争力につながっていくのです。
「弱い仲間」が示すボトルネック
RPGにおいて「ムラ」によって生まれた“弱い仲間”は生産管理で考えるとどういうことを指示しているのでしょうか。中ボスの一撃ですぐに倒されてしまう弱い仲間がいるということは、他の仲間がどれだけ高いレベルにあっても、パーティ全体としては低いレベルになっているということがいえます。この“弱い仲間”が原因で、その中ボスが倒せないのだとすれば、それは「ボトルネック」になっているといえるでしょう。
ボトルネックとは、ワインボトルの細くなっている部分のことです。ワインを注ぐ時を考えれば、いくらビン自体を太くしても、注ぎ口(ボトルネック)の大きさ以上には、注ぐ量やスピードは大きくならないということを示します。つまり、ワインを注ぐというパフォーマンスを考えるとき、それを決めているのはビン自体の太さではなく、ボトルネックになるということです。
レベルの低い仲間がボトルネックになっているとするならば、その仲間のレベルを上げなければ先には進めません。プレーヤーもそれを無意識に理解しているため、ボトルネックにならないようにレベルの低い仲間のレベルアップをさせるという作業を行っています。
この話を生産管理の領域で考えてみましょう。例えば、ある重要な工程において生産性が低く期待される生産量が出せないのであれば、他の工程でいかにいい設備を導入したり、人員を増強して生産能力を高めたりしても、生産量を増やすことはできません。むしろ仕掛り品の在庫が増えるだけとなります。仕掛り品の在庫は、製品になって売れるまでは、現金化されないため、経営面で見るとキャッシュ・フローが悪化するだけとなります。つまり、パフォーマンスを決める要素のうちで最も生産性の低い工程が、最終的な全体のパフォーマンスを決めるということになります。
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