無人の自律走行型ロボットトラクター、誤差5cmの精密農業実現へ:ロボット開発ニュース
日立造船と日立製作所、ヤンマーは準天頂衛星システムから配信される高度測位信号を用いて自律走行型ロボットトラクターによる無人作業に成功した。今後は誤差5cmという精度での農作業実施を目指す。
日立造船と日立製作所、ヤンマーは2015年1月14日、総務省が実施する「海外における準天頂衛星システムの高度測位信号の利用に係る電波の有効利用に関する調査」の委託先に選定されたと発表した。
本調査では、準天頂衛星システムから配信される高度測位信号を用いて自律走行型ロボットトラクターを制御し、誤差5cmという精度での農作業実施を目指す。調査実施地域はオーストラリアニューサウスウェールズ州で、実施期間は2014年10月〜2015年3月が予定されている。
従来のGPS衛星から測位データを受信する精密単独測位方式(PPP方式)では10〜20cmの精度が限界とされているが、本調査ではオーストラリアの電子基準点と、準天頂衛星から受信する高精度測位信号を組み合わせた使用した新しい精密単独測位方式(PPP-AR方式)を用いて精度を高め、誤差5cmを目指す。
日立造船はプロジェクトの全体管理、ヤンマーは自律走行型トラクターの開発運用、日立製作所はトラクターの走行データや作物生育センサーのデータを収集して可視化するなどの役割を担う。なお、ヤンマーは2013年7月に1台のトラクターに搭乗している乗員だけで、もう1台のトラクターを自動運転で追従走行させたり、耕運や作付けなどさまざまな作業を行わせたりすることができるシステムを搭載した次世代トラクターのコンセプトモデル「YT01」を発表しており、YT01は2017年に量産される予定とされている。
2014年11月末には最初の実証実験が行われており、自律走行型ロボットトラクターを使用した稲の立毛時期における条間走行(植えた稲と稲の間をタイヤが通る走行)と、農作業に成功しており、今後は複数の農作業について時期を変えて調査を継続し、現在、検証が進められている3種類の高精度測位方式 (RTNet/RMIT/MADOCA)の中から、オーストラリアでの精密農業に適切な方式を選定することを目指す。
将来的には本調査実施機関を中心としたコンソーシアムを形成し、精密農業事業を積極的に展開していく予定であり、また、位置情報の高精度化技術の他事業への応用や、オーストラリア以外の日本やアジアへの展開も検討するとしている。
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