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縦弾性係数でせん断応力を計算しましたが、何か?:甚さんの「サクッと! 設計審査ドリル」(5)(2/4 ページ)
「シャフトが折れたので、強くしておきました」について説明するために、せん断応力を計算したけれど……。今回は、学問好きな良君が活躍します。
この問題、学生によく出される問題なんだけど、やってみてよ。
ここで縦弾性係数を使うのは間違いなんですよね? あえて使ってみますね。
直径10mmのピンと仮定する。
断面積A=(10/2)2×π=78.5 mm2
引張り荷重W=39200N
従って、
せん断応力τ=W/A=499.4N/mm2
ここで、材料SS400を検討してみる。SS400の縦弾性係数は、図Cから200kN/mm2を引用する。
安全率=200×1000/499.4=400
ホントだ、安全率が400って! これは明らかにおかしいわ。縦弾性係数じゃなくて、横弾性係数で計算するのかしら?
SS400の横弾性係数は、図Cより81kN/mm2を引用する。
安全率=81×1000/499.4=162
これでも、高すぎるわ!
せん断破壊なのに、縦弾性係数や横弾性係数を使うってことは、寿司にソースを掛けて食べるようなものだよ。今回は、ひとまずこの3つからきちんと理解しよう(図2)。
- 縦弾性係数は、図中左の「垂直応力」と「曲げ」で使う。
- 横弾性係数は、「せん断」で使う。
- これらの弾性係数は、弾性範囲内で使う。
完全に勘違いしてました……。ところで図中の垂直応力については、「設計審査で最も多く質問される応力とは?」に出てきましたね。
筆者は、クライアント企業で開催される設計審査会にて、ゲスト審査員としてよく招かれます。実際、多くの技術者が、構造体の応力を計算するときに、縦弾性係数や横弾性係数だけを使って安全率を求めてしまっている場面に遭遇しました。これをスルーしてしまっては、市場で割れや破損などのトラブルが多発してしまいます。
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