失敗しないERP導入プロジェクトの進め方(選定編):中堅製造業のためのグローバルERP入門(5)(2/3 ページ)
中堅製造業に効果的なグローバルERPの活用方法と、失敗しない導入方法を解説する本連載。前回から3回にわたり、ERP導入を成功に導くための重要なポイントについて、プロジェクトのステップごとに解説しています。今回は、ERP製品と導入ベンダーの選定について説明します。
ERP選定の手順
一般的なERPの選定では、下記の手順で進めることになります。
- 提案依頼書(RFP)の作成:要求事項を取り纏めて文書化し、導入ベンダーに対する提案依頼用の資料を作成
- 候補のERP製品・導入ベンダーの決定:ERP製品と、導入を委託するベンダーの候補の決定
- RFPの配布と提案内容の評価:導入ベンダーにRFPを配布して提案を依頼し、各ベンダーの提案内容を評価
提案依頼書の作成
ERP製品と導入ベンダーを選定するためには、自社の要求事項を取りまとめて、導入ベンダーに提案を依頼するための文書を作成します。この文書を「RFP(Request For Proposal:提案依頼書)」と呼びます。
RFPを作成する目的は、最適なERP製品と導入ベンダーを選定するために、要求事項を正確に伝えることです。必要な事項が正しく記載されているRFPを提示することで、提案するベンダー側がユーザー企業のニーズを的確に捉え、より良い提案を提示してくれることが期待できます(図2)。
以下に、RFPを作成するにあたり留意すべきポイントを記載します。
優先度を明確に
RFPには、経営層やユーザー部門の要求事項(要件)を記載します。スケジュールやコストに制約がないのであれば、全ての要件を実現することも可能ですが、現実的にそのようなケースはあり得ませんので、優先度を明確にして要件の絞り込みを行い、社内でコンセンサスを得ておくことが必要です。ERP導入の目的や達成目標に立ち戻り、それらを実現するために必須の要件を抽出します。それ以外の優先度の低い要件は、導入するERP製品の機能に合わせて業務を見直しするなどの割り切りが必要です。
評価を意識した内容を盛り込む
RFPを提示した後には、各ベンダーから提案書が提出され、それを評価して採用するERP製品と導入ベンダーを決定します。各ベンダーが、自由な様式で提案書を作成してしまうと、これらを比較して優劣を付けることが難しくなってしまうので、RFPに提案書の構成(目次)を指定しておくことを推奨します。それにより、各ベンダーの提案書の記載内容が比較しやすくなり、より高い精度で選定することができるようになります。また、この段階で選定する基準や評価項目を明確にしておくことで、提案書が出てきてから速やかに、かつ客観的に評価を行うことができます。
要件の記載レベル
導入ベンダーは、RFPに記載された要件について、提案するERP製品が適合する部分と追加で開発が必要な部分を識別するので、要件の数や難易度が見積金額に反映されます。例えば、現行システムで保有する機能を細かいレベルで列挙してしまうと、ERPの標準機能とのGAPが生じやすく、見積金額が想定よりも高くなってしまう可能性があります。前述したように、重要な要件は細かく記載しつつも、優先度の低い要件はERPに合わせて業務を変更する、くらいの割り切りが望ましいと考えます。
候補となるERP製品・ベンダーの抽出
RFPが完成したら「候補となるERP製品」と「RFPを提示する導入ベンダー」を探します。最初に候補となるERP製品の絞り込みを行います。前述したような企業規模や得意領域を加味して、自社の要求に合いそうなERP製品をピックアップします。次に、ピックアップしたERP製品の導入を手掛けているベンダーを探します。候補の製品ごとに、自社と同じ企業規模や業種での導入実績を有するベンダーを探し出し、RFPを提示する導入ベンダーを決定します。製品ベンダーに問合せして、業種や対象領域などに応じて適した導入ベンダーを紹介してもらうこともできます。
一般的にRFPを提示するベンダーは、5〜10社程度が適当です。ERPの提案では、各ベンダーから100ページ以上のボリュームの提案書が提示されます。それを丁寧に読み込んで評価するには多大な工数が必要になりますので、あまり多くの会社から提案を受領するのはお勧めできません。
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