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溶接屋とデザイナーが手掛けるバリアフリーなハンドバイクzenmono通信(2/2 ページ)

モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、宇賀神溶接工業所の宇賀神一弘さんと、テコデザイン代表の柴田映司さんが登場する。

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溶接屋さんのハンドバイク

 われわれ(enmono:zenmono主催者)は、そのような宇賀神さんのマイクロモノづくりについて、過去に取材させていただいたことがある。2012年には第29回 MMS(enmonoによるWebキャスト番組)にも出演いただいた。その当時はハンドバイク専門ブランドのHandBike Japanを設立される前で、なぜ溶接工場がハンドバイクを作るようになったのかというお話を伺っていた。

 きっかけは2009年に、事故で下半身の自由を失ってしまった方から「自分用に、手でこぐ三輪自転車を作ってほしい」と問い合わせがあったことだそうだ。宇賀神さんが「自転車は作ったことがないので」と断ろうとしても、「(ホームページに載っている製品のように)技術があるから作れるはず」と熱弁で返されてしまった。しかし図面もない。そこで1年前、一緒にモノづくりをした柴田さんのことが、すぐ頭に浮かんだという。


エネルギッシュな宇賀神さんはラグビーをやっていたそうだ(左)。ライダーの柴田さん(右)が並走しながら、細やかにフォローする

 宇賀神さんからハンドバイクの件を相談された柴田さんは、困難を想像しつつも、大きな可能性を感じた。当時、日本製のハンドバイクは存在しなかったとのことだ。「世の中にないものをデザインすること」への挑戦に興味を持ったという。また、柴田さんは、何事も「やってみよう」と前向きに考えるタイプだった。自動車・家電部品のセールスエンジニアや、企業のプロモーション関係の仕事も経験し、幅広い分野のデザインを手掛けられている。柴田さんはメンテナンスやコストを考慮し、既存の自転車パーツに合わせて何度も設計変更しながら、10カ月かけて図面を完成させた。

 約3年間、宇賀神さんと柴田さんは新しいモデルのハンドバイクを開発し続け、展示会やイベント、インターネットでも情報を発信してきた。その活動は多くのメディアで取り上げられ、注目を集めている。

 宇賀神さんと柴田さんの理想は、「日本国内でのモノづくり」だ。ハンドバイクが注目されるようになれば、日本の製造業や関係者が海外ではなく、日本のモノづくりに目を向けてくれるのではないかと考えている。

 たった2人でやっている事業のため、自分たちが業界を動かすくらいの気持ちでなければ、企業は協力してくれない。「日本のモノづくりの未来を考えると、『自分たちだけ良ければ』『今さえ良ければ』というわけにはいかない。モノづくりをする人間として、若い人がモノづくりに興味を持つような、本当に役立つモノを作りたい」という思いがあるそうだ。これまで宇賀神さんと柴田さんは、一生懸命に「点」を作ってきたという。今、その「点」とenmonoが持っている「点」がつながり、新たな線が出来つつあるという。

 zenmonoでもハンドバイクのプロジェクトを立ち上げ、さまざまな形の支援を募集し、目標金額の50万円を達成してゴールとなった。支援内容によって、ハンドバイクの試乗会に参加できることになっていた。

今後の予定(MONOist編集部追記)

 クラウドファンディングのゴール後は、福祉関連や自転車関連のイベントなどで試乗会を開催しながら、ハンドバイク普及版の準備を進めてきた。現在、受注は始まっており、既に7台のハンドバイクを納品したということだ。

 2015年4月6日から、シンガーソングライター 森圭一郎さんによるハンドバイク日本縦断も予定している。出発地は鹿児島県庁で、同年8月15日に北海道庁にゴールする。旅の途中で出会う初対面の人にも助けてもらいながら、ゴールを目指すという。

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