復活2年目のダットサンブランドが目指すもの:ダットサン 事業本部長 インタビュー(3/3 ページ)
ダットサンブランドが復活した2013年、新型車である「GO」と「GO+」の評判はそう芳しいものとはいえなかった。復活から2年目となる2014年を迎え、ダットサンブランドはどのような方向性を目指そうとしているのか。「インドネシア国際モーターショー2014」の会場で、同ブランド事業本部長のヴァンサン・コベ氏に聞いた。
「GO+」に試乗、なかなか元気のいい走りっぷり
インドネシアは、日本車メーカーのシェアが96%以上という、日本車メーカーにとっては天国のような地域である。だが一方で、この国では、クルマは家や教育と並ぶ大きな投資だ。だからこそ、「あなたたちの経済力で買えるクルマはこんなものですよ」といった提案は受け入れられない。クルマは財産であり、安さをセールスポイントにしても、数年後に下取り価格が大幅に下がっていたり、大きな修理が必要になったりするようでは、誰にも見向きされない。だからこそ、日産とダットサンといった2つのブランドへの信頼感に裏打ちされたモデルを市販し、同時にこれからクルマを欲しいと考える人たちに夢を見せようとしている。
実際にダットサンの販売店にも足を運んでみた。この一帯には、インドモービルグループに属する日産、スズキ、日野自動車、Volvo Cars(ボルボ)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)の販売店が並んでいる。日産の販売店のドアをあけると、セールスウーマンが優しい笑顔で声をかけてきた。日本から来たジャーナリストであることを告げると、親切にダットサン関連のカタログをセットで持ってきてくれた。そして、GO+の試乗もできると勧めてくれる。あいにく、インドネシアは独自の免許制度を敷いており、国際免許で自動車の運転はできない。同行した人物がインドネシアの免許を所有していたので、同乗試乗させてもらった。
全長3995×全幅1635×全高1490mmのボディサイズは、ベースのGOに対して210mm延長されている。助手席に座った感じでは、インパネやドアトリムがプラスチックで構成されており、シンプルそのものという印象。3列目のシートは身長が171cmの筆者にとって乗り込むのが難しそうだった。その他のシートは、小ぶりながら日本の軽自動車くらいのクッション感はあって、まあまあ座れる。
ステアリングホイールの脇にあるブレーキレバーをリリースして、マニュアルトランスミッションを1速に入れて走りだす。インドネシアの道路があまり路面状況がいいとはいえないこともあって、バンプに差し掛かると、乗員全員で跳ね上がるようなショックを感じる。サスペンションのストロークが不足気味で、お世辞にも乗り心地が良いとはいえない。しかし、大人4人が乗り込んだ状態でも、意外なほどしっかりとした加速感を感じた。812kgと軽量なボディを、最高出力50kW/最大トルク104Nmを生む排気量1.2l(リットル)エンジンが引っ張るがゆえに、なかなか元気のいい走りっぷりだった。
セールスウーマンに聞くとGOやGO+を見に来る客の多くは、都市部に住む若者や核家族だという。今後、redi-GOのような小型SUVなどのモデル展開が広がると、都市部の若者にとって魅力あるラインアップになりそうだ。
筆者紹介
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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