ARMがIoTプラットフォーム「mbed OS」で大切にする3箇条:mbed OS
ARMが正式発表したIoT(Internet of Things)プラットフォーム「mbed OS」は、同社の本格的なIoTへの取り組みとして注目の存在だ。来日した同社幹部にmbed OSの狙いと詳細を聞いた。
英ARMがカンファレンス「ARM TechCon 2014」(米サンタクララ 2014年10月1〜3日開催)で正式に発表した、IoT(Internet of Things)プラットフォーム「mbed OS」。組み込み業界で大きな存在である同社による、本格的なIoTへ取り組みとあって、大きな注目を集めている。来日した同社IoTビジネスユニット テクノロジ担当ディレクタのMikko Saarnivala氏にmbed OSの狙いと詳細を聞いた。
さまざまなデバイスがインターネットにつながること(モノのインターネット)で、大きな変革が起きる――。これはIoTを語る際に頻出するフレーズだが、インターネットに接続されるデバイスの数がいつ、どれくらいの規模になるかは、さまざまな数値が発表されている(ARMでは現時点、2020年に300億個と予想している)。いずれにしても今まで以上のデバイスがインターネットに接続されることになる。
IoTデバイスがこのように爆発的に増加すると考えると、製品作りについてもこれまで顕在化していなかった課題が浮上するとSaarnivala氏は指摘する。Saarnivala氏によれば、考えられる課題は「生産性」(低コスト化の要求はさらに高まる)、「セキュリティ」(企画段階から考慮するべきだ)、「接続性」(IoTデバイスは多種多彩な接続に対応する必要がある)、「マネジメント」(数百、数千のデバイスが接続される場合に管理は重要な要素だ)、「省電力性」(簡単な問題ではないが、常に取り組まなくてはならない課題だ)の5つで、これを解決し、なおかつ「セキュアでシンプルなモノづくりの手伝いをするため」(Saarnivala氏)にmbed OSは投入されるのだという。
mbed OSはCoretex-MベースのMCUで動作し、ドライバやセキュリティコンポーネント、各種ネットワークプロトコルなどを提供する軽量なOSだ。「OS」と名付けられているが一般的なOSが持つスケジューラは搭載せず、イベントドリブンで処理を行っていく。これはSaarnivala氏が指摘する、省電力性を考慮したためだ。Saarnivala氏も「mbed OSはRTOSではない。イベントドリブンの処理をこなすためのOSと考えて欲しい」とコメントしている。
mbedは以前から同社の開発プラットフォームとして存在するが、mbed OSの投入でIoT対応のデバイスプラットフォームという色彩を強めることになる。既存デバイスのIoT対応(ネットワーク対応やセキュリティの担保)に必要なOSやドライバ、ネットワークスタックなどmbed OSとして提供することで、IoTデバイスの開発を加速させるのが同社の狙いだ。
mbed OSは端末向けに提供されるが、その端末とクラウドサービスの間に入るのが「mbed Device Server」だ。いわゆるゲートウェイに相当し、暗号化通信やアプリケーションならびにデータのマネジメントなどを担う。クラウド内での実装が主になると思われるが、SaaS型での提供も視野に入れる。mbed OS搭載機器をクラウドサービスへ接続するために不可欠という訳ではないようで、「(mbed OSとmbed Device Serverは)組み合わせて使うと効率を高められるので、双方あるほうがいい」(Saarnivala氏)という。
mbed OSとmbed Device Serverのいずれもオープンソースライセンスに沿った無償提供(Apache License 2.0での提供)となり、mbed OSは搭載製品に対してのライセンス料も発生せず完全に無料だが、mbed Device Serverについては商用利用時にライセンス料金が発生するビジネスモデルを採用する。ただ、課金方法や金額については検討中としている。
mbed OSならびmbed Device Serverのパートナー向け早期公開は2014年12月、パブリックリリースは2015年12月が予定されている。ARMアーキテクチャは非常に多くの組み込み機器に利用されているため、mbedプラットフォームの登場はジャンルを問わないモノのインターネット化を促進する可能性を秘める。Saarnivala氏はこのmbedプラットフォームの指針を「IoTデバイスの開発を加速する」「テクノロジーの断片化を防ぐ」「オープンスタンダードで進めていく」と表現し、幅広くの賛同者を得られるよう努力していくとした。
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