デザインとは「形だけではなく、社会の文化も作っていくこと」:zenmono通信(2/3 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、千葉工業大学 デザイン科学科の山崎和彦教授にお話を伺った。
enmono三木氏 「情報デザインのワークショップ」には、40ものワークショップのやり方、進め方が書かれています。山崎先生はプロダクトデザイナー時代にノートPCの「ThinkPad」などをデザインされていますが、その頃から造形だけでなく、ビジネス全体や社会システム全体をデザインするような考えがあったのでしょうか?
山崎氏 ありました。モノが良くても売れなかった経験があって、「モノだけやっていても成功しない」と実感しました。それと、リチャード・サッパーというデザイナーに「デザインとは形だけではなく、社会の文化を作っていくことなんだよ」と教えてもらったのです。リチャード・サッパーは「ThinkPad」のコンサルタントでした。サッパーが、プロダクトの造形を見る繊細な視点と、「これは社会に役立つだろうか」という両方の視点でデザインしたものがあります(笛吹きケトルと、チーズ用のおろし金)。
enmono三木氏 この笛吹きケトルとチーズ用のおろし金のどの部分に「社会性」が込められているのでしょうか。
山崎氏 このヤカンはハーモニカのユニットが入っているので、汽笛のような音が鳴ります。毎日が楽しくなるきれいな音が鳴ることに一番時間を費やしていて、造形的な面白さは最後に、スパイス的に入れているのです。コーヒーを飲む人も楽しいけれど、コーヒーを入れる人も楽しい。チーズ削りも、楽しむユーザーの姿を描いてデザインしています。イタリアではワインを配るのは主人の権限で、チーズを削るのは子どもなどの役割だそうです。ワインを注ぐようにテーブルの上で優雅にチーズを削れば、削る人もそれを受ける人も楽しいですよね。
enmono三木氏 「Smile Experience」の「Smile」ですね。
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