シンプルなポタアンを理解しながら作るための第1歩:電子工作“超”入門(1)(2/2 ページ)
この連載は簡単なポータブルアンプの製作を通じて、抵抗やコンデンサの読み方といった、初歩的な電子回路についての知識を学び、電子回路に親しんでもらうのが目的です。今回は「電子回路の読み方」を見てみましょう。
回路図は難しくない
上の写真を回路図で表現するとこうなります。R1〜R5は抵抗、C1〜C7はコンデンサ、真ん中に○と矢印が書かれているのがトランジスタです。ちなみに英語でいうと抵抗はレジスタ(Register)、コンデンサはキャパシタ(Capacitor)なので、回路図ではその頭文字を取って表現しています。
では回路図の各所について、見ていきましょう。
回路図は基本的に「左側が入力、右側が出力」です。今回の図で言うと、左から入ってきたオーディオの信号は、中央に配置されているトランジスタで増幅され、右側の出力へと流れていきます。トランジスタの「B」と書かれている所に流れる入力信号を増幅するのに使われているのが3Vの電源です。
さてトランジスタが出てきました。回路図には「C」「B」「E」と書かれているのが分かるでしょうか。順に「コレクタ」「ベース」「エミッタ」と呼びます。ベースに流れる電流が、CからEに流れる電流を調整してエミッタ側に渡します。CからEの間の電流は一定ですので、B側に流れる音声信号の電流の量に従って調整(増幅)されるというわけです。
今回使っているトランジスタは「NPN」型のトランジスタです。もう1つトランジスタには「PNP」型が存在します(理科系の方なら、高校の物理などで習ったのを思い出したでしょうか)。NPN型のトランジスタは自由電子が電荷を運ぶN型半導体と、電子が不足している「正孔」を持つP型半導体をつなぎ合わせて作られています。電子はN型からP型に流れますので、電流はP型からN型に流れることになります。回路図の表記ではベース(B)からエミッタ(E)に矢印が引かれているものがNPN型、反対にエミッタ(E)からベース(B)に矢印が引かれているものがPNP型です。
なお、今回使っているNPN型の「2SD1590」というトランジスタは「ダーリントントランジスタ」といい、内部で2つのトランジスタがつながっています。1つ目のトランジスタのエミッタを2つ目のトランジスタのベースにつなぎ、2つのトランジスタのコレクタをつなげるのがダーリントン接続です。2つのトランジスタをつなげることで増幅率を高くします。
回路的にはトランジスタを2つ接続してもいいですが、それでは場所を取ってしまいますし非効率です。このため1つのパッケージに2つのトランジスタを内蔵する部品を選択しました。ちなみにシドニー・ダーリントンというアメリカ人が発明したのでこの名前が付いています。
ところで1つ、気になるものがありませんか? 斜めの線とともに「GND」と書かれた場所です。上の回路図で言うと、C7と書かれている470μFのコンデンサの下にあります。これは文字そのもの、Ground(接地)を表し、ここは「−」(マイナス)につなぐよ、という意味です。斜線だけが書かれる場合もありますが、これも同じです。決して回路が途切れているわけではなく、この射線がある端子すべてをマイナス側につないでいくことになります。
さて、ひと通り回路図について見てきましたが、それほど難しいことではないことが理解して頂けましたでしょうか。次からは抵抗の種類からカラーコードの読み方について話していきたいと思います。
■今回使用した部品
回路図での部品番号 | 仕様(名称) | 備考 | 価格(1個あたり) |
---|---|---|---|
R1、R4 | 150Ω | 1/4Wカーボン抵抗 | 5円 |
R2、R5 | 3.9Ω | 1/4Wカーボン抵抗 | 5円 |
R3、R6 | 51Ω | 1/4Wカーボン抵抗 | 5円 |
C1、C4 | 47μF | 16V耐圧電解コンデンサ | 10円 |
C2、C5 | 0.01μF | 積層セラミックコンデンサ | 10円 |
C3、C6、C7 | 470μF | 16V耐圧電解コンデンサ | 10円 |
TR1、TR2 | 2SD1590 | ダーリントントランジスタ | 50円 |
JK1、JK2 | 3.5mm小型ステレオミニジャック | 基板取付用 | 50円 |
―― | 電池ボックス(単三形×2本) | 端子ピンタイプ | 50円 |
―― | ユニバーサル基板(72x47mm) | 片面ガラス | 60円 |
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