GMの「キャデラック」に採用されたNXPの車車間通信用IC、決め手はセキュリティ:車載半導体
NXPセミコンダクターズジャパンは、東京都内で会見を開き、車載半導体事業の取り組みについて説明した。General Motors(GM)が2016年に市場投入する「キャデラック」にNXPの車車間通信用ICが採用されることになったが、その決め手はセキュリティだったという。
NXPセミコンダクターズジャパンは2014年10月17日、東京都内で会見を開き、車載半導体事業の取り組みについて説明した。
会見にはオランダ本社のNXP Semiconductorsでセールス&マーケティングおよびオートモーティブ担当シニア・バイス・プレジデントを務めるドゥルー・フリーマン氏が登壇した。フリーマン氏は、「2020年までに500億個のデバイスがインターネットに接続可能になるといわれている。これらIoT(モノのインターネット)市場の、10%を自動車が占める見込みだ。NXPは、この自動車におけるコネクティビティとセキュリティを同時に実現する製品群を展開しており、車載半導体事業の新たな柱になっていくだろう」と語る。
その代表例として同氏が挙げるのが車車間通信(V2V)や路車間通信(V2I)といったV2X用の通信ICである。同社は、ソフトウェア無線技術を活用して、日本、米国、欧州の3地域に1つのプラットフォームで対応できる製品を投入していた(関連記事:「ソフトウェア無線でITSのグローバル対応を実現」――NXP社の車車間/路車間通信プラットフォーム)が、ついに量産車向けのV2Vモジュールに正式に採用された。General Motors(GM)の2017年モデル(市場投入時期は2016年内)の「キャデラック」に搭載される、Delphi Automotive(デルファイ)製のV2VモジュールがNXPの製品を採用したのだという(関連記事:車両間通信向けチップセット、NXPがデザインウィンを獲得)。
フリーマン氏は、「全てのモノがネットワークにつながるIoT、中でも自動車はセキュリティが極めて重要になる。デルファイのV2Vモジュールへの採用は、電子認証やICカードのセキュリティコントローラなどで培ったセキュリティ技術をベースとした、V2Xにおけるセキュリティの実現力が認められたからだ」と強調する。
ミリ波レーダーも開発中
今回の会見では、2つの新製品が発表された。1つは、車載グレードのNFC(近距離無線通信)コントローラ「NCF3340」である。NCF3340は、NFCフォーラムが規定するNFCコントローラインタフェース(NCI)を採用している。NCIを採用するNFCコントローラで車載グレードをクリアした製品は「世界初」(NXP)だという。主な用途は、車載情報機器とスマートフォンのペアリングや、車載情報機器を使ったドライバーの認証、カーシェアリングの管理システムなどだ。
もう1つの製品は、超小型のスマートカーアクセス用IC「NCF29A1」だ。スマートカーアクセス用ICというのは、パッシブキーレスエントリーやリモートコントロール用RFトランスミッタ、イモビライザの機能を1チップに集積したICのことだ。パッケージは、外形寸法が5×5mmの32端子QFNとなっている。これは、従来比で70%のサイズ低減となっている。このため、スマートフォンケースやスマートウォッチなどに搭載できるという。
さらに、開発中の製品として示されたのが車載ミリ波レーダー用デバイスだ。詳細は明らかにされなかったものの、自動車の先進運転支援システム(ADAS)や路側装置などで新たに利用が認められつつある79GHz帯に対応する製品とみられる。
日本では売上高の68%が車載
NXPの車載半導体事業の状況については、NXPセミコンダクターズジャパンでオートモーティブ事業部の事業部長を務める濱田裕之氏が説明した。濱田氏は、「2013年のNXP全体の売上高48億1500万米ドルのうち、車載事業は22%を占めた。日本はさらに寄与率が高く、68%が車載事業となった」と述べる。
NXPの車載半導体事業といえば、CANやLINをはじめとする車載ネットワーク用のトランシーバIC、デジタルラジオを含めたカーエンターテインメント用のDSPやチューナIC、ABSなどに用いられている磁気抵抗(MR)センサーなどが主力だった。「今後は、ソフトウェア無線、クラスDアンプ、スマートカーアクセス関連、車載イーサネットのトランシーバ、ヘッドランプ用のLEDドライバ、そしてV2Xといった製品の成長が期待できる」(濱田氏)という。
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