MRJ完成式典「メイドインジャパンの旅客機、夢から現実へ」:CAEニュース
国産リージョナルジェット機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」の完成式典が行われた。2017年の就航に向けた区切りの一歩となる。
2014年10月18日、三菱重工業と三菱航空機による、ジェット旅客機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」開発の区切りとなるロールアウト式典が、三菱重工 名古屋航空宇宙システム製作所 小牧南工場で行われた。ロールアウトとは航空機が完成して工場から出されること。式典では三菱重工業 取締役会長の大宮英明氏と取締役社長の川井昭陽氏があいさつするとともに、MRJの完成機体が関係者に披露された。今後は2015年の初飛行へとコマを進めていくことになる。
大宮会長は式典の始めのあいさつで、「今は世界中にメイドインジャパンの製品があふれているが、旅客機におけるメイドインジャパンの製品はYS-11(プロペラ機で初の国産旅客機)の生産終了後、約40年間途絶えていた。国産旅客機の復活は自身のおよび三菱重工の長年の夢であるとともに、日本の夢であると思う」と述べ、「日本のモノづくりの叡智の結晶と、国産旅客機事業を復活させたいという多くの情熱が見事に融合したことにより、世界に誇れるメイドインジャパンの製品が、ようやく夢から現実へと姿を変えようとしている」と感慨を語った。
大宮会長のあいさつの後、式典会場の建屋の扉が開き、MRJと開発に携わったスタッフが登場した。
来賓あいさつの中で、国土交通副大臣の西村明宏氏は「国産旅客機の開発プロジェクトはわが国の航空産業の発展に大きく寄与する」と期待を述べた。「MRJは同クラスのジェット旅客機と比べて、必要となる滑走路長が短く、低燃費、低騒音であるなど地方路線に適した特性を持つと聞いている。開発が引き続き着実に進められることで、世界各地の近中距離路線での活躍が期待される」と述べた。
経済産業大臣代理であいさつした同省製造産業局長の黒田篤郎氏は、「わが国の産業競争力を強化していく上でも象徴的なプロジェクトであり、子供たちのあこがれともなるもの。経産省としても、成長分野である航空機産業がわが国の基幹産業になるように取り組んできた」とコメント。「日本の航空機産業は長らく国際共同開発に参画する形で足腰を鍛えてきたが、今後はMRJから始まる完成機事業がその屋台骨を担うことになる。成功させるために引き続き全力で支援する」と述べた。
ANAホールディングス 代表取締役社長の伊東信一郎氏は「この歴史的な瞬間に立ち会い、間近でMRJの美しい機体の雄姿を見ることができて大変感動している。関係者の方においては苦労を乗り越えて、本日晴れてロールアウトという節目を迎えられたことに心から感謝と敬意を表する」と発言。「待望の国産ジェット旅客機を世界で最初に受領し、運航できることは本当に名誉なこと。ANAはローンチカスタマーとしての誇りと責任を持って、三菱航空機と一緒になってMRJを世界中から信頼され愛される航空機にしていきたい」と述べた。
省エネ、騒音低減がメリット
MRJは旅客機の中でも座席数が70〜90席のリージョナルジェット機と呼ばれるカテゴリとなる。地方エアラインを中心とした近中距離での利用を想定したもの。MRJでは高度な空力設計技術や騒音解析技術を導入するとともに、最新鋭のエンジンを採用しており、運行経済性と環境適合性においてメリットを持つ。「これによりエアライン各社の競争力と収益力の向上に大きく貢献する」(大宮氏)。
運航の大前提となる型式証明の審査は、国土交通省航空局の航空機技術審査センター(愛知県)が行う。MRJは2017年の型式証明の取得を目指している。今回ロールアウトした機体は飛行試験の初号機として、組み込んだ機器類が設計通りに動作するかなどを確認したのち、2015年第2四半期に飛行試験を開始する予定。試験機は、今回完成した機体を含む飛行試験機5機と、地上試験機2機の計7機が製造される。今後は2017年第2四半期のANAをはじめとする航空会社への納入に向けて試験、審査を行っていく。
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