コミュニティーづくりから実戦の場へ――世田谷ものづくり学校が描く新ビジョン:モノづくり×ベンチャー インタビュー(2)(3/4 ページ)
IID 世田谷ものづくり学校(IID)は2014年秋から、個人のクリエイターや中小企業を巻き込んでモノづくりを産業として発展させる体制を整えている。廃校を再活用したモノづくり拠点として2004年から行ってきた取り組みを基に、今後はどのようなビジョンで活動を進めようとしているのだろうか。
モノの価値を体験できるワークショップを目指して
MONOist 次に、「アクティビティ」の部分について聞かせてください。
木下氏 ここ数年で、さまざまなところでモノづくりのワークショップが開かれるようになりました。今多いものだと、参加者が何かをちょっと加工しておみやげを持って帰るみたいなものが多い。でもIIDではそのさらに先を目指したワークショップを企画しています。
具体的には、「この製品ってこうやって作っているのか」「この作業にはこれだけの時間がかかるものなんだ」ということをワークショップの参加者に理解してもらえるように工夫しています。それを理解してもらえると、今身の回りにあるモノの価値というのが分かるようになると思うんです。結果的にそれは、モノの買い手を育てるということにつながりますよね。
ワークショップというのは、参加者に何かを体験してもらうというだけではなく、ワークショップを主催する企業や個人がテストを行う場でもあるんです。世田谷区という文化水準が高い地域に住まれている方は、大量生産ではないモノへの興味が高かったり、モノの良さを理解してくれたりします。そういった方々に対して自分が開発している製品を試すといった実験の場としても活用できるというのが強みです。
また、親子で参加できるイベントやワークショップも頻繁に開催しています。実際に製造業に携わっている方の中には、「デザイナー」とか「クリエイター」という存在に対してや、こうしたワークショップに抵抗がある方もいらっしゃいます。親子で参加するようなイベントを行うことでハードルを下げて、来ていただいたときにIIDのコンセプトを説明すると「じゃあ自分も何かやってみよう」と思ってくださる方もいるんです。
今後もこうしたワークショップや展示に加えて、コンペティションの開催なども検討していく予定です。
最新のデジタル機材を設置した「プロトタイピングルーム」
MONOist 2014年9月には、ハイエンドの3Dプリンタや3Dモデリングツールなどを利用することができる「プロトタイピングルーム」が開設されています。こうした施設を設置した背景には何があったのでしょうか?
木下氏 今までお話した、ネットワークやアクティビティというのは、これまでのIIDの活動の延長でもあります。そこに足りなかったのが、IIDで実際に試作や製品を作れる機能を追加するという考えだったんです。これが、New Seasonのテーマの1つである「ラボ」に該当する部分です。IIDの中には木工房はあるものの、何かここでアイデアが生まれて、試作品を作ってみようとしても立体物の場合は実現が難しかった。そこをもっと簡単にできるようにしたいと考えて、プロトタイピングルームを開設しました。今後、本格的な印刷機を導入した施設の開設も検討しています。
先ほどのアクティビティの話ともつながりますが、IIDの3Dプリンタを使って出力した製品を展示するということも可能です。IIDで試作や開発を行うメリットというのは、展示することで他の方からの評価をもらうことができるということだと思います。その見せ方の部分なども、IIDに訪れる方々と相談することも可能です。
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