3Dプリンタ屋さんに聞く今後のモノづくり:zenmono通信(3/4 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、東京中野で3Dプリントサービスを提供している東京メイカーの毛利宣裕さんにお話を伺った。
3Dプリンタブームは今後どうなる?
enmono 去年くらいから3Dプリンタがブームになって、急に一般の人が騒ぎ始めた感じがします。17年も3次元業界にいらっしゃった毛利さんは、どのように受け止められました?
毛利氏 私は23年前、高校1年生の時に初めて光造形が発売されるというニュースを見て、この業界に興味を持ちました。その時の感動が今、皆さんにやってきているのかな、という感じがしますね。でも、3Dプリンタを実際に見たことがある人は、まだ少数。ここを通り過ぎる人たちも、「あっ、3Dプリンタだ」と言って初めて見ていかれる人が、ほとんどです。
enmono 銃を作った人も出てきて、ニュースになりましたね。3Dプリンタを規制するような意見もありますが。
毛利氏 良いことに使えば、無限の可能性がある機械です。怖がる必要はないと思います。データを処理するソフト側に対策をしたり、これは林信行さんというITジャーナリストの方がおっしゃっていたんですけれど、材料に誰が製造したか分かりやすくするためのバインダーを入れるとか。材料メーカーが、警察などが識別しやすいような物質を少量混ぜ込むことで、ロットで絞り込めたり発売日で絞り込めたりできるというのは、いいアイデアです。
enmono なるほど。2次元の、紙のプリンタが世の中に出てきた時、「印刷屋さんが無くなるかも」と言われました。衰退はしているかも知れませんが、今も印刷屋さんはあります。ですから、一部メディアで3Dプリンタに過剰な期待を抱いているような雰囲気もありましたが、製造業も無くならないわけで。2次元の時と同じで、データの方が重要だったり。
毛利氏 3Dデータの方が圧倒的に大事です。3Dプリンタが普及しても、データを作る人が増えないと、機械は使いきれません。
enmono ケイズデザインラボの原さんは、それを危惧されて、3次元モデリングの教室「3D道場」をやられています。実は、私と毛利さんは、そこでお会いしたのです。どういうモデリングをするかが、非常に重要なのですね。
毛利氏 その3Dプリンタに合ったモデリングをしないと、形状をきちんと作成できないことがあります。光造形やパウダー造形はある程度、設計者の意図した通りにモノができますが、FDM(熱溶解積層法)方式は制約があります。
enmono 安い3Dスキャナーなども、出てきましたね。
毛利氏 私も一番安い「Sense」を持っています。PCを片手に持ちながら、もう片方で物体をスキャンしていくんですけれども、ちょっとした拍子に機械が自分の位置を見失うんですよね。そうすると、一からやり直しです。失敗したデータを集めて合成することができれば、いいんですけれど。
enmono 誰かが、「PCの画面をiPadに映し出して見ながらやるといい」と言っていました。「Air Display」という、iPadをセカンドディスプレイにするアプリケーションがあるんです。
毛利氏 それはいいですね。Senseは、一度決まれば、少し不具合があっても造形できるように修正してくれます。おもちゃとしては、すごく面白いと思います。
enmono 3Dプリンタは今後、どうなっていくと思われますか。
毛利氏 パーソナルタイプは、業務用とは全く違う進化をしていくと思います。もっと気軽に、DIYが楽しめるようになるでしょう。木工細工は音が出たりするので、土日の昼間にしかできなかったりします。3Dプリンタは音も出ませんので、部屋やダイニングに置いて、平日の夜にPCを使ってモデリングすることもできます。そのように楽しまれたらいいんじゃないかなと思います。
enmono 一家に1台。
毛利氏 そうなったら、いいですね。機械がちゃんと動くようになったり、キラーコンテンツが出てくると、一気に普及するのではないでしょうか。
enmono ありがとうございました。
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