3Dデータ作成ツール「Autodesk ReCap」――オートデスク担当者に製品戦略を聞く:リアリティキャプチャー技術に注力(1/2 ページ)
オートデスクは3Dデータ作成ツール「Autodesk ReCap」を中心とするリアリティキャプチャ技術の開発に注力している。ReCapの概要や今後の開発予定などを米Autodesk Reality Capture, Information Products GroupのElmer Bol氏に聞いた。
「Autodesk ReCap」は、レーザースキャナや複数の写真から3Dデータを生成するソフトおよびサービスの総称である。現在、無料の「ReCap」および有料の「ReCap Pro」「ReCap 360」が提供されている。なお、以前は同様の機能が「ReCap Studio」および「ReCap Photo」という名前で提供されていた。
ReCapは、スキャンデータの可視化に加え、オートデスクが提供するクラウド「Autodesk 360」への出力、データの除去および編集を行うことができる。2014バージョンからは扱える点群が20億から200億点以上と大幅に増えた(図1)。無料で提供する他、「AutoCAD」「Navisworks」「Revit」「Inventor」「Infraworks」「Civil 3D」「Map 3D」「Plant 3D」「3ds Max」にも同梱されている。
ReCap Proは、スタンダードバージョン(ReCap)が持つ機能に加えて、ターゲット(目標点となるマーカー)がない状態で複数のスキャンデータをレジストレーション(統合)することが可能だ。重ね合わせは取得したデータ空間それぞれにおいて共通する3点を指定、または2Dビューで2点を指定して行う(図2)。「同様のツールは他にもあるが測量士などの専門家でなくては扱えなかった。これに対し、われわれのReCap Proは、専門家でなくてもレジストレーションが容易に行える手軽なツールとなっている」と米Autodesk Reality Capture、Information Products GroupのElmer Bol氏は説明する。
ReCap 360は、オートデスクのクラウド上で提供されるツールで、大きく2つの機能がある。1つは、アップした複数の写真から3Dモデルを生成できる機能である。そして、もう1つはクラウドにアップした点群データを共有できるというものだ。「点群データは容量も大きく非常に重くなるため、クラウド上で閲覧し、計測が行え、注釈を付けられることは大きなメリットである」とBol氏はReCap 360の優位性を説明する。
こうして得られたスキャンデータは、ReCapで特定の範囲や平面を領域として認識させて、オートデスクの各ツールに読み込み、配置換えや新しい設計物の追加などを行うことができる。例えば、建築・建設BIMソフトウェアのRevitを用い、点群にスナップさせて新たな壁を追加したり、3D CGツールの3ds Maxで、スキャンした路面データにモデルの影を投影するようなレンダリングを行ったりすることも可能だ。
2014年9月後半には、ReCap Proの新バージョンが発表される予定だという。現在、ターゲットがなくても複数のスキャンデータをレジストレーションすることができるが、新バージョンではターゲットがある場合にはそれらを活用してレジストレーションができるようにもなる。これにより、特徴的な目標物があまりない屋外でもReCap Proの利点を享受できるという。
可能な限り簡単に扱えるものを目指す
Bol氏は「リアリティキャプチャー技術は20年ほど前から使われ始めていた」と説明。もともと石油業界のプラントの増改築のために開発されたそうだ。プラントは構造が複雑に入り組んでいる一方で、図面は2Dのものしかなく、新たにパイプを追加できるスペースがあるか検討することが難しかった。そのため、実際のプラントから3Dデータを作る必要に迫られたという。
オートデスクでは、約2年前からこの技術を提供してきた。オートデスクの開発の方向性としては、通常は測量士や専門家でなければ行えなかった技術を、普段オートデスク製品を使っているが専門ではない人にも扱えるようにするという。つまり、マニュアルが必要ないほどのものを目指すということだ。
製造業においては、自動車や半導体の工場での利用が特に多いという。半導体工場の事例では、建設中の段階で建物内をスキャンし、別の離れた場所にあるプレハブで構築したものがきちんとフィットするかを確認するために利用するという。
建設分野での活用も増えているそうだ。最近の傾向として、「建設のプロセスが製造のプロセスにどんどん似てきている」(Bol氏)という。各パーツが離れた場所で作られ、現場に持ち込んでから組み立てられるため、各パーツが設計図通りに組み上げられているかなど、QA(品質保証)やQC(品質管理)の確保のために使われているのだそうだ。
さらに、具体的な事例として、岩山の上に建築物をモデリングした例を紹介した。ウェアラブル向けの高機能カメラ「GoPro」(約350ドル)とドローン(約600ドル)を用いて岩山の写真を撮影し、ReCap 360で3Dデータを作成、Revit上でモデリングを行ったという。トータル1000ドルも掛からずデザインを作ることができるが、より正確に設計するなら点群データの取得も必要になる。
また、今はもう存在しないものも写真を使えば3Dモデル化できるという例を紹介した。オートデスクでは、2001年にアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンによって破壊されたバーミヤンの大仏像を3Dモデルで再現した。「デジタルの写真データはほとんど存在せず、1970〜80年代に出版された雑誌のデータを使うしかなかった」(Bol氏)そうだが、新エンジンによって高いクオリティの仏像が再現できたという。
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