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自作の簡単タッチセンサーで、フィジカル疑似体験ゲームを遊ぼう!Scratch 2.0で体験! お手軽フィジカルコンピューティング(9)(1/3 ページ)

Webブラウザだけでプログラム開発から実行まで行える「Scratch 2.0」を用い、センサーの接続や外部デバイスのコントロールに挑戦!今回は簡単なタッチセンサーとそれを使って遊ぶゲームを自作します。

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 本連載は、Webブラウザ上でプログラム開発から実行までを行える「Scratch 2.0(以下、Scratch)」を用いた“フィジカルコンピューティング”入門です。電子回路があまり得意でない人でも取り組みやすい、センサーや外部デバイスと接続した作例を紹介しています。

 今までPCのマイク端子に接続するさまざまなセンサーを試してきました。読者の皆さんには、記事を見て実際に作られた方もいらっしゃると思います。

 試された中で、マイクに接続された入力端子の片方を触ると、音量が変化することに気づいた方もいらっしゃると思います。これは電気電子技術者の間ではバズ音、あるいはハム音といわれるものでノイズとして扱われてきました。技術者たちはこれをなるべく低減するように回路や筐体を設計します。

 今回はこの厄介なノイズを逆手にとって、超簡単に作れるタッチセンサーとそれに連動するゲームを紹介します(図1)。作り方はとても簡単なのですが、なぜそんな現象が起こるかを理解するのはちょっと大変かもしれません。またこの仕組みを利用したセンサーはAC電源につながったPCやノートPCでしか使えません。ですから原理をしっかり理解したうえで、この仕組みが動作する環境を選んで遊んでみてください。

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図1:自作タッチセンサーを利用したゲームの概念図

タッチセンサーの仕組みと作り方

 まずは今回制作する、タッチセンサーの仕組みを知ることから始めましょう。3.5mm径のステレオミニプラグ1個とミノムシクリップケーブル1本、そしてミノムシクリップで挟みやすい金属を用意します(筆者はコインを使いました)。これを下の写真のように接続し、PCのマイク端子に差し込みます。ミノムシクリップの先につないだコイン(金属の部分)を指で触れば音量が変化します。以前の記事で紹介したオシロスコープ(Scratchで「簡易オシロスコープ」を作ろう!)で音量の変化を確認してみましょう。

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コインに触れると音量が変化する様子を、Scratch 2.0で作った「簡易オシロスコープ」で確認してみましょう

 コインを触るとオシロスコープの波形が跳ね上がるのが確認できるでしょうか。ここで触ったときと触らないときの値を記録しておきましょう。筆者の場合は触らないときが10以下、触ったときが70前後でした。この値は後に説明するプログラムで使います。あまり波形に変化がない場合は、以前の記事で紹介したマイクゲインを調整してください。この触ったときの音量変化を、タッチセンサーからの入力値変化として利用します。

タッチセンサーの原理

 PCは通常、AC電源から電力を得て動作しています。AC電源は100Vの交流(1秒間に50回、あるいは60回、プラスとマイナスが入れ替わっています)で、一般家庭やオフィスに供給されています。

 AC側とPCの内部回路はトランスで隔てられています。トランスには2組のコイルを組合せたものですが、AC電源側とPC側は別々のコイルなので直接つながった状態にはありません。しかし、完全には電気的に絶縁されていないために静電結合という現象が起こり、PC側の回路に微弱ですが交流の信号が入り込みます。

 静電結合は簡単にいうと、直接接触していない導体と導体が電気信号を伝えてしまう現象です。目に見えないコンデンサのようなものが、PCの内部回路とAC電源側の間にできていると考えてください。

 PC側回路の大半はデジタル回路なので、この程度のノイズでは全く影響を受けません。しかしマイクのようなオーディオ回路の入力段は非常な微小な電圧を扱います。この入力端子に人体のような静電容量の大きな導体が触れると、マイク端子から人体を通し大地とのパスが確立され、静電結合が起こります(図2)。結果として、マイク端子に微弱な電気信号の変化が現れるのです。

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図2 静電結合の概略 AC接続することで地面を通じてのパスが通じ、電気的に通じていないはずの回路でも電流が通じる

 ノートPCやタブレット、スマートフォンなどを内蔵バッテリーで使っている限りこの現象は起こりませんが、ACアダプターを用いている場合は地面を通じてのパスが確立するため、静電結合が起こります。ノートPCなどが手元にあれば試してみてください。先ほど作ったタッチセンサーを触ったときの音量の変化を、電池のみで動作させているときとACアダプターを接続えしている時とで比べてみれば、この現象がAC電源に接続されているときのみ起こる現象だということが分かります。

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