検索
連載

金型屋さんが生み出した自社製品ブランド――MGNETの武田修美さんに聞くzenmono通信(2/4 ページ)

モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、金型製作所の商品開発と販売部門から新ブランドを立ち上げたMGNETの竹田修美さんお話を伺った。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

車の営業マンから金型会社へ

enmono宇都宮氏 商品を流通させるには、モノづくりとは別の能力というか、労力が必要になりますよね。武田さんは、マーケティングなどのお仕事をされていたのですか?

武田氏 いいえ、車の営業マンでした。武田金型には入りたくないと思っていたんです。小さい頃から友達や親戚に「後を継ぐんだろ」と言われ、葛藤もある中でディーラーに勤めました。5年ほど働かせていただいたのですが、大病を患いまして。しかも、2つほぼ同時に。出勤しては休んでという状況で営業をやりつつ、2年ほど検査通院していると、今度は車の運転もできなくなり、立ってもいられなくなってしまいました。

enmono宇都宮氏 そうすると、営業としてはちょっと大変ですよね。

武田氏 無理ですね。会社としても雇用は難しいですし、お客様にも迷惑を掛けてしまいます。それで、辞めざるを得ない状況になってしまったんですね。1週間の半分は立てない状態が続いていたので、再就職をしようにも内職くらいしか選択肢がありません。こういう状態になった時、家族会議を開きました。「PCを使った仕事なら、できるかな」というわずかな希望に社長が、「うちで働けばいいんじゃないか」と言ってくれて。

 その時は単純に父として救ってくれたのだとは思うんですけれども、社長が商品開発をやり始めていまして、「まずは、売るということをやってみてくれ」と。素直に、「えっ? いいの?」と思いました。2005年に武田金型に入社したのですが、社長からは「実績ができてから出社しろ」と言われました。「こんな倅(せがれ)が入社したなんて、とても言えない」と。自宅でひたすらPCに向かっていました。

enmono宇都宮氏 それで、ECサイトと会社のWebサイトをつくられたのですか?

武田氏 そうですね、ゼロから勉強して。今考えると、よく「やる」と言ったなと思います。ネットを駆使して徐々に作れるようになっていって、一番最初に立ち上げたWebサイトがマグネシウム製品の専門店です。

enmono宇都宮氏 マグネシウムって、一部では使っているんでしょうけれど、かなりニッチですよね。

武田氏 社長がマグネシウムに興味を持ったのがきっかけで、マグネシウムの製品を作るようになりました。今は、カーボンに可能性を感じているようですが。これが一番最初の商品、マグネシウム合金の名刺入れです。1年ほど販売して、「考え直した方がいいな」と気付くんですね。それでも11個売れたんですよ。実は、1人の方が8個買ってくれるというミラクルが一度起きているので、4回しか売れていないのですが(笑)。今でもお世話になっている師匠のような方と出会ったことも、考え方を変えるきっかけになりました。当時、名刺入れの専門店はなかったので、「名刺入れに特化しよう」となったのです。

enmono宇都宮氏 自社の名刺入れだけではなくて?

武田氏 はい。マーケティングの勉強もしていた頃で、「名刺入れといえば、金属じゃないな」と思ったんです。金属の名刺入れを使っている方もいらっしゃると思うんですけれど、「やはり、革かな」と(笑)。それで、革の製品をつくっているメーカーさんに電話をかけていきました。「武田金型製作所ですけれども」と名乗ると、「はい?」と門前払いですよ。でも、ある女性が話を聞いてくれまして。かわいい革小物をつくっているメーカーのデザイナーさんで、(私と同じように)メーカーとして駆け出しだったので、話を聞いてみようと思っていただけたようです。何よりびっくりしたのは、旦那さんが金型屋さんだったんです。いろいろ話をしているうちに、取り扱いをさせていただけて。

enmono宇都宮氏 すごい偶然ですね。ご縁ですよね、それは。

武田氏 それから木工メーカーさんにもお願いして、革と木工も取り扱う名刺入れの専門店「MGNET」をオープンしました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る