クリーンディーゼルをさらに進化させる、TDKが第3世代圧電素子を開発:車載電子部品
TDKは、クリーンディーゼルエンジンの主要部品であるコモンレールシステムの燃料噴射装置(インジェクタ)などに用いる圧電アクチュエータの第3世代品を開発した。2017年の量産車に採用されることを目標に事業展開を進める。
TDKは2014年8月26日、クリーンディーゼルエンジンの主要部品であるコモンレールシステムの燃料噴射装置(インジェクタ)などに用いる圧電アクチュエータの第3世代品を開発したと発表した。既にサンプル出荷が可能。サンプル価格は非公開で、個別対応になる。2017年の量産車に採用されることを目標に事業展開を進める。
クリーンディーゼルエンジンのコモンレールシステムは、インジェクタからエンジン気筒内に高圧で燃料を噴射する。燃料燃焼の際にススや窒素酸化物の発生を抑えるには、複数回に分けて最適な量の燃料を噴射する必要があるが、その制御を行うのに用いられているのがインジェクタ内に組み込まれたアクチュエータだ。インジェクタに用いられているアクチュエータにはソレノイドと圧電(ピエゾ)素子の2種類がある。一般的にはピエゾ方式の方が、より精密な燃料噴射の制御が可能とされている。今回TDKが発表した圧電アクチュエータは、このピエゾ方式インジェクタに用いられる。
圧電アクチュエータは、内部電極とセラミックを交互に積層した構造になっており、電圧を印加するとセラミックスが伸び縮みする。このセラミックスの伸び縮みを利用して、インジェクタの燃料噴射が行われている。一般的な圧電アクチュエータは内部電極にパラジウム/銀(Pd/Ag)を使用しているが、TDKのEPCOSブランドでは高価なPd/Agをより安価な銅(Cu)に置き換えた製品を2003年に開発。2009年にはCuを使った圧電アクチュエータの第2世代品を投入しており、今回発表した製品は第3世代品となる。
第3世代品の特徴は大きく分けて3つある。1つ目は、セラミックスの伸び縮みによって変位する量が、材料と素子構造の改良により従来品に比べて20%増えたことだ。2つ目は、圧電アクチュエータに入力する電気エネルギーを機械エネルギーに変換する効率(電気機械結合係数)が75%を超えたことである。3つ目は、170℃の高温環境下で10億サイクルもの連続駆動が可能な耐久性である。
従来、Cuを使った圧電アクチュエータは、Pd/Agを用いたものよりも安価な分、変位量や電気機械結合係数は劣っていた。しかし第3世代品は、変位量、電気機械結合係数とも、Pd/Agを用いた圧電アクチュエータを上回っている。さらに170℃の高温下での耐久性についても、Pd/Agを用いた圧電アクチュエータの連続駆動1億回の10倍となる10億回を達成した。高温高湿環境下(温度85℃/湿度85%)でも、同じく10億回の連続駆動が可能だ。「この耐久性は、部品交換が必要になるまでの走行距離に換算すると2倍に相当する」(TDK)という。
今回の第3世代品は、以下の仕様の範囲内で個別に注文することになる。電圧は50〜400V。外形寸法は、フットプリントが3×3〜12×12mmで、長さは5〜600mm。変位量は5μ〜100μmで、力の大きさは100〜10kN。
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