「瞬撮」でフィギュア作ってみる? ――3Dスキャナでは考えられない早さの秘密:3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(38)(3/3 ページ)
自分のフィギュアを作成できるサービス「瞬撮」。3Dスキャナを使って全身を3Dデータ化する一般的なサービスと何が違うのか? 筆者が身をもって体験してきた。立体になると見たくないものも客観的に見ることができる!?
「瞬撮」について聞く
ここまでお伝えしたように、撮影自体はあっという間に終わってしまったので、兼松さんに少しお時間をいただき、瞬撮のサービスについてお話を伺いました。
東京リスマチックさんが瞬撮のサービスを開始したのは、2014年5月ですが、サービスをスタートさせるまでに、約半年の時間を要したそうです。ちょうど1年ほど前に構想が持ち上がり、必要な機材を調達したのは2013年10月。そこからが大変だったようです。
「とにかく“調整”に時間がかかりましたね。カメラの位置や角度、焦点はもちろんですが、適正なカメラ台数を見つけるまでが苦労しました。多ければ良いというわけではなく、台数の増減を繰り返しながら試行錯誤で調整していきました。品質の良いきちんとしたデータを作るためには、撮影するカメラがお互いの位置関係を把握している必要があるのです」(兼松さん)。
なるほど、それだけ調整に手間暇かけているのであれば、撮影ブースの「撮影禁止」はうなずけます。ノウハウの固まりですからね。
「そんなこんなで、お客さまに提供できるサービスクオリティーに仕上げるまでに約半年を費やしたというわけです。私が知る限り、今の当社の品質レベルで同様のサービスをやっている会社は他にないと思いますよ」と兼松さん。瞬撮は、まだサービスを開始したばかりなので、今後は、積極的にユーザーを増やすための活動をしていきたいそうです。
なお、撮影した画像から3Dデータを作成するソフトウェアは、市販品を自社仕様に一部変更したものを用いているのだとか。大量の一眼レフカメラや、データ処理を行うハードウェア、ブースのストラクチャー、ソフトウェアなど含めると、やはり「相当な」設備投資が必要なようです。
それにしても、なんでカメラによる“瞬撮”だったのでしょうか?
「当社には、3Dスキャナもありますので、当初はそちらを使うことも考えていました。しかし、いろいろと検証してみると『これでは私たちが望むサービスを提供できない』ということがはっきりしたので、今回の方式にしました」(兼松さん)。
それってどういうことでしょう?
「私たちは、老若男女、小さな子ども、動物など、多くの人たちにサービスを提供したいと考えています。となると、3Dスキャナでは動きのあるものがどうしても撮れません。何度か小さな子どもで検証してみましたが、どんなに『じっとしてね』と言っても、じっとしてくれません(笑)。やはり、“一瞬で終わる”ということが重要だと実感したわけです」(兼松さん)。
筆者や3D-GANの事務所スタッフのように、自分の3Dデータから“自分フィギュア”を作るのはどうも苦手という人がいる一方で、近ごろでは、何かの記念にということで、記念写真……というかプリクラ感覚で、自分や家族のフィギュアを作りたいという人も少なくないようです。きっかけはどうであれ、こうした新しいサービスの登場を機に、3Dデータに接する人がもっと増えるのであればよいですね。また撮られるのが苦手な人にとっても、一瞬で撮影が終了してしまうのはよいかもしれません。ちなみに、現在、東京リスマチックさんでは3Dデータの販売はしていませんが、「今後、検討していきたい」とのことです。
また、兼松さんは、瞬撮サービスをフィギュア作成だけにとどまらせない“ある野望”があるそうですが、その内容は現時点では秘密。もっとも、東京リスマチックさんは、2次元の印刷の世界で、ユーザーの変化に対応して多種多様なサービスを展開してきた実績があります。ビジネスの展開という側面で、兼松さんは「東京リスマチックには過去の経験から活用できるものが多数ある」と言います。
さらに、サービス品質についても兼松さんは自信をうかがわせます。「例えば、当社の3Dプリンタの出力サービスは、決して安いわけではありませんが『クオリティーなら東京リスマチックだよね』というありがたいコメントをSNSなどに投稿していただいております。依頼を受けたものは、単に出力をするだけでなく、寸法がきちんと出ているか、はめ合いは大丈夫かなど、製品としての品質も出力とともにしっかりと確認するようにしています」。
なるほど、確かに、筆者も最近いくつかの案件で出力をお願いしていますが、期待以上の仕上がりになっていると感じています。こうした丁寧な仕事ぶりにより、確実に利用者の心をつかんでいるようです。
――体験取材からしばらくして。
東京リスマチックさんから「完成しましたよ」との連絡が入りました。送ってもらうのも待ち切れず、すぐに取りに行きました。
で、出来上がったのがこれ。
これを家族に見せたところ、「これでもう言い逃れができないでしょう! ダイエット、ダイエット」との反応。はい、確かに……。
きちんと仕上げていただくことと、被写体の良しあしはまた別の話ですね。ということで、今回はこれにて失礼します。ではでは!
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