ハイブリッドレースカーが火花を散らす、今WECがアツイ!:今井優杏のエコカー☆進化論(12)(3/5 ページ)
F1と並んで、現在注目を集めている自動車レースの世界選手権がある。2012年から始まったFIA世界耐久選手権(WEC)だ。今回は、ハイブリッドレースカーだけが参加できるトップカテゴリーの「LMP1-H」に参戦しているトヨタ自動車を中心に、WECの魅力をお伝えしよう。
「モータースポーツハイブリッド」という新たな流れを作る
さて、あなたはハイブリッド車と言ったらどんなイメージを思いうかべますか?
WECに参戦するハイブリッド車は、燃費だけを競うようなトロトロ走りなんかしませんよ。ル・マン24時間レースが行われるサルト・サーキットで時速330kmを超える(!)最高速度をたたき出すのがLMP1クラスのハイブリッドレーシングカーたち。
トヨタの今年のモデル「TS040 HYBRID」は、エンジン馬力520ps+モーター馬力480ps=システム馬力1000psとまさに弩級のレーシングスペック! ちょっとわれわれの考えるハイブリッド車の枠を越えちゃってます。
しかし、「その技術は確実に市販のハイブリッド車の延長線上にあるのです」とトヨタ自動車は説明しています。その技術は、「プリウス」や「アクア」の先にあるものだと。
そしてもはや「ハイブリッド車=燃費がいい」というだけではなく、その先に乗って楽しい「モータースポーツハイブリッド」という新たな流れを作ることを、トヨタは視野に入れています。
2014年6月に行われたル・マン24時間レースで、トヨタは盛大に沸いていました。
WECの第1戦目をワンツーフィニッシュ、第2戦目も1位と3位で表彰台に上がる大健闘を見せて好調をアピールしていたトヨタ陣営。好調を維持したまま、長いル・マンの歴史の中で、日本人ドライバーが日本車で初めてポールポジションを獲得したのです。その記録をたたき出したのは、現在「スーパーGT」や「スーパーフォーミュラ」などで活躍している中嶋一貴選手でした。
2014年のル・マン24時間レースでポールポジションを獲得した中嶋一貴選手(中央)。本戦はアレックス・ブルツ選手(右)、ステファン・サラザン選手(左)とともに走行した(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
しかしながらレースの最終結果は、マシントラブルのために中嶋選手がドライブする7号車は惜しくもリタイア……。チームの落胆ぶりは目を覆うばかりでした。とはいえ、ル・マンの冷酷な女神は最後に少しだけほほえみを見せます。序盤にクラッシュで大きく順位を落としていた、トヨタの8号車が3位に見事返り咲き、表彰台を獲得したのです。
昨年までとにもかくにもアウディが強かったWEC。しかし今年は違います。ル・マンこそアウディに優勝の座を譲りましたが、トヨタのシリーズ・チャンピオン獲得にはこれまで第1戦と第2戦で築いたリードもあり、まだまだ大きく期待が残ります。
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