もうやめて! 「あっち向いてホイ」なQC矢印の乱用:甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(11)(2/4 ページ)
「矢印」を多用したプレゼン資料は本当に見やすいのか? 外国人技術者にとって“日本人が多用する矢印”は、その資料を読み解く際の妨げになるケースもあるとか。本稿を参考に、正しい矢印の使い方をマスターしよう!
それでは早速、図1をご覧ください。これは、ある精密機械企業における「新人事制度」を説明するための図です。この企業の人事部関係者が作成したものだそうです。
これが人事部の資料かい? 人事部も、まずは日本語だろうがぁ、あん! 追い出し部屋のことばかり考えているからこうなるんだぜぃ。
この図1を初めて見た読者の皆さん! 最初にどの部分に注目しましたか(目が行きましたか)? また、書かれていることの全部、もしくは一部でも「解読」できましたか? この矢印のことを、筆者は「QC矢印」と呼んでいます。
資料やパワポが提示されたら、普通は左上に目が行くものだわ。それにしても、この図、矢印だらけね。なんだか、昭和のオジサン臭いわ!
世も末だぜぃ。この作成者はきっと自分に酔っているんだろ。オメェもそうだろがぁ、あん。こんな企業は、まともな企業じゃあるめぇ。せいぜい、追い出し部屋でも作ってろってんだぁ!
あれ? 僕の資料にそっくりだ!! 確かに言われてみれば、矢印だらけ! でも、甚さん。昭和初期のオジサンのパワポは、文字だらけですよ〜。僕の方がはるかにスッキリしてる!
べらんめぇ! 「技術者は、パワポを“設計”する」って言ったろがぁ、あん?
エッ!? なんで、エリカちゃんが江戸弁で甚さんやるの? ぜ、前回から、これで2回目だけど?
オメェ、ホントに富士山麓大学 主席の院卒かぁ、あん? 資料やパワポを他人が見て理解できなければ、「技術者は、パワポを“設計”する」に値しねぇってもんよ。
技術者は、パワーポイント資料を「作成」するのではなく「設計する」
これが必ず押さえておくべきポイントかつ、技術者向けコミュニケーションプレゼンの特徴です。連載第9回「走馬灯プレゼンはダメ! 技術者向けプレゼン“設計”とは」で、何度も復習しましょう!
私は完全にマスターしたわ! これで転職の準備バッチリね!!
さて、話を元に戻しましょう。
かつて「QC手法(注)」が全盛期の時代、「ボトムアップ」という単語が出現しました。企業の活性化のためにはボトム層、つまり、一般社員の士気を高める必要があるというのです。
注:QC手法(Quality Control)とは何か。「JIS Z8101」によれば、「買手の要求に合った品質の品物、または、サービスを経済的に作り出すための手段の体系」と定義されている。定番の新人教育メニューとなっている品質マネジメント。技術者の基本知識。
また、かつて「安かろう、悪かろう」と世界中から罵られた日本製品を、品質に関して世界トップレベルに引き上げたのが、QC手法といっても過言ではありません。残念ながら、隣国の製品が高品質かつ低価格となった今、QC手法は「死語」になりつつありますが、筆者は“技術者の基本中の基本”だと理解しています。
最近では、QC手法というよりも、「TQM(Total Quality Management)」と呼ばれる管理手法として知られています。しかし、言葉の定義に厳しい方々からの非難を覚悟した上で、筆者はQC手法で統一しています。
ただ残念なことに、世の中には「QCオタク」がいて、この人々が“主役”としてQC手法を伝授したため、“重き手法は現場で嫌われる”状況になってしまいました。一方、主役ではなく“脇役”として指導されてきたQC手法は逆に成功し、現在も深く根付いています。こうしたことからも「全てはQC手法だ!」という指導者は避けた方が無難でしょう。
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