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アップルにあって日系電機メーカーにないものは何か?再生請負人が見る製造業(2)(3/5 ページ)

企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回は苦境が続く日系エレクトロニクス産業について解説する。

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“八方ふさがり”の日本企業に求められるもの

 日本のエレクトロニクス各企業の悩みは非常に深い。目指している市場には既に巨大になったプレーヤー(競合相手)が立ちふさがり、自ら強みとすべき差別化の要素が顧客にとって意味のあるものではなくなってきている。縮む勇気を持っていったん大胆なタウンサイジングを実行しようにも、その後の成長戦略が描けなければ縮む勇気を持つことも難しい。そして成長戦略を実現するために許された時間も、あまり残されていない。

 そのような状況に置いて、筆者が基本的な行動規範として提案するのは、以下の3つの項目である。

1.徹底的なコストダウン

 日本企業の中には、いまだに「高品質だから高くなる」「高品質だから高くなっても仕方がない」という意識を持つ企業が多い。しかしながら、この発想がもはや通用しなくなっていることを認識すべきである。いまの時代に求められるのは、「高級品でも安く作る」「高級品であっても安く作れる」という考え方だ。

 1つの事例として、最近日本のPC事業立て直しを行った際の分析がある。PC事業において、日系企業とグローバル企業のコスト構造を調査した結果、両社には大きな違いがあった。PC事業については「キー部品が限られていて、キー部品を安価に獲得できる購買力(すなわち物量)が全て」といわれることが多い。確かにそれも一面としては正しい。しかし、実際にコストを比較をすると、以下のようにキー部品以外の項目でのコスト差が非常に大きいことが分かった。

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 キー部品以外とは、筐体や機構部品、電子部品などである。このコストを高くする要因となっているのが、高級品としての設計部門のこだわりである。

 例えば、このケースにおける「こだわり」としてあったのが、消費者の要求する要素を小さな空間に全て取り込むということだ。その要求に応えるために筐体のデザインは常に変更しなければならず、またそうでなければ消費者はついてこないという考え方があった。しかし、それは設計者の思い込み以外何ものでもない。なぜなら、もしそこに強いニーズがあるのであれば、それに見合う価格が付けられるはずであり、事業が危機になることはないからだ。

 これらを戦略的に分担して行えているであればいいが、全製品ラインにおいてこのようなことが常態化してくると、テクノロジーが入れ替わった市場の導入期に、消費者からハイエンドと認識されているごく短期間での収益しか上げられなくなる。市場の普及期に入り、市場が要求する価格が落ちてくるとそこに付いていくことはできず、競争力を失う。最終的には「この製品・サービスのセグメントはもはやハイエンドが存在しなくなってしまったから仕方がない」と無反省な解釈を行い、次の何かを探し求めるというようになる。しかし、それでは製品分野を流浪するだけの話だ。

 ハイエンド製品やサービスを提供する場合であっても「ローエンドで勝負できるコスト構造」を持たなければ、どんな製品ラインに移っても生き残ることはできない。それだけローエンドの企業が競争力を付けてきているということを認識すべきである。以下のグラフを見てほしい。

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ハイエンド製品を展開する企業のコスト曲線とローエンド企業を提供する企業のコスト曲線(クリックで拡大)

 いわゆる低価格戦略に対抗している欧米のエレクトロニクス企業は、この「ハイエンドで勝負する企業のコスト曲線」で勝負している。つまりハイエンド製品であってもローエンド製品の価格を下回るコスト競争力を身に付けなければ勝ち目はないということだ。

 日本企業に求められているのも、このコスト曲線を実現することだ。高コスト構造での生存領域はもはやなくなっていることを強く認識すべきである。ハードあってもソフトであっても、製品コストを高くしている要素(設計思想や部品選定基準、製造コスト)を見つけ出してそれを撲滅し、低コスト化が実現可能な要素があればそれを積極的に活用していく。そしてハイエンド製品としてどうしても譲れないポイントを明確にし、そこだけはこだわりを持つというメリハリが必要である。

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