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トップランナーモーター百花繚乱! 産業用モーター各社の提案ラストスパートTECHNO-FRONTIER 2014(1/2 ページ)

「TECHNO-FRONTIER(テクノフロンティア) 2014」(2014年7月23〜25日、東京ビッグサイト)において、産業用モーターメーカー各社は2015年春に施行される「トップランナー基準」に対応した、プレミアム効率(IE3)モーターを展示するとともに、高効率モーターの利点を訴えた。

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 「TECHNO-FRONTIER(テクノフロンティア) 2014」(2014年7月23〜25日、東京ビッグサイト)の「モータ技術展」では、2015年4月から規制が開始される「プレミアム効率モーター」を含む、高効率モーターに高い関心が集まった。産業用モーターメーカー各社は、規制基準をクリアしたプレミアム効率(IE3)モーターを出展するとともに、さらなる高効率を実現するモーター技術などを紹介。高効率モーターの利点を訴えた。


世界的な産業用モーター規制の流れ

 「トップランナーモーター」による規制は、モーターにおける世界的な省エネ機運の高まりが根本にある。世界の用途別消費電力量を見ると、照明や家電品、熱変換機器などを抑えてモーターが最も多くの電力を消費しており、その比率は全体の46%に達するという。これらの状況を背景に、主要各国でもモーターの消費電力効率についての規制が広がりを見せる。米国や欧州をはじめとし、豪州やニュージーランド、韓国や中国、ブラジルなどでも規制が開始されている(関連記事:規制開始まで1年を切る「トップランナーモーター」についておさらい)。

 一方日本では、従来インバータ技術と組み合わせたモーターシステム全体としての省エネルギーを推進してきたため、高効率モーターそのものの普及は進んでいない状況だった。しかし、ポンプや圧縮機、送風機などに利用されるモーターは、家庭用と産業用を合わせると、毎年約1千万台が出荷され、1億台以上の台数が普及している。省エネ化を進めるにおいて、モーターの高効率化は避けて通れない問題になっていた。

 そこで、2013年11月に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」により、産業用モーターがトップランナー制度の対象機器に追加された。これにより、産業用モーターにおいても省エネ基準(エネルギー消費効率に関する目標基準値)が設定されることになった。2015年4月以降、モーターの製造事業者が出荷するモーターや輸入されるモーターは省エネ基準の達成を加重平均で義務付けられることになり、この基準が満たされない場合は販売できなくなる。

 これらの規制開始の動きを受け、テクノフロンティア 2014で産業用モーターメーカー各社は、規制をクリアしたIE3(プレミアム効率)相当のモーター新製品を一斉にアピールした。

IE5相当の高効率モーターが注目を集めた日立産機システム

 日立産機システムは、IE3相当の高効率モーターラインアップを紹介するとともに、2014年7月9日に発表したIE5レベルのアモルファスモーターを出展し、注目を集めた。

 同社のトップランナーモーターの特長は、大きさや軸系や足穴位置などの寸法が、全機種で標準効率(IE1クラス)モーターと同一で、従来機種との置き換えが容易であることだという。

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日立産機システムの豊富なトップランナーモーターラインアップ(クリックで拡大)

 また、新たに同社および日立製作所で開発したIE5クラスのアモルファスモーターは、鉄芯にアモルファス金属を採用した11kW容量のモーターだ。アモルファス金属の鉄損の低さを利用する一方で、独自の設計方法による加工のしにくさを解決し、効率化を実現している。従来のサイズ以下で、これまでのIE4クラスモーターの損失をさらに3割低減し、96%の高効率化を実現できることを確認したという。今後は、2016年3月期(2015年度)の製品化を目指し、技術開発を進めていく方針だという(関連記事:日立、効率96%を実現するIE5レベルのアモルファスモーターを開発)。

 日立産機システム 営業企画部 広報・宣伝グル―プ 部長代理の松井智氏は「日立製作所にとってモーターは創業事業であり、先進技術により新たな市場を切り開いていく。世界の省エネ化の流れの中、規制されるIE3クラス以上の省エネについてもニーズが生まれてくると見ている。IE5クラスのモーターの技術開発は既に海外メーカーでは取り組んでいるところもあるが、そこに負けずに日立のモーターを世界に訴えていきたい」と話している。

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新開発したIE5レベルのアモルファスモーター(クリックで拡大)

周辺機器も含めた実用的な省エネを訴えた三菱電機

 三菱電機では、IE3以上のトップランナーモーターのラインアップのアピールに加えて、周辺のインバーターなど周辺機器を組み合わせることで、パフォーマンスに影響を与えずに、高効率化を実現するデモを行った。

photophoto 三菱電機の高効率モーターデモ。(左)は標準効率モーターとプレミアム効率モーター、IE4クラスのIPMモーターをインバータ駆動させた時の比較。(右)はプレミアム効率モーターとインバータを組み合わせて、低速でのオルゴール駆動を行うデモ。高効率モーターは低速駆動が苦手だが同社製のモーターとインバータを組み合わせると0.3Hzでの低速駆動が可能となるという(クリックで拡大)

 三菱電機 名古屋製作所 新城工場 汎用モータ設計課長の仲興起氏は「モーター単体での高効率化は当然追求していくが、三菱電機ではインバーターやブレーカーなど周辺機器も総合的に扱っている強みを生かし、システムとしての高効率とパフォーマンスをアピールする狙い。インバータと組み合わせることで高効率モーターが苦手な、低速駆動も実現可能で搬送機器などへの利用に対応している」と語っている。

 また三菱電機では、日本の産業用モーターメーカーの中ではいち早く、韓国のIE3クラスの省エネ規制に対応した「韓国認証」を取得。2015年1月の規制開始に向けて、先行する利点を発揮していく。三菱電機 FAシステム事業本部 機器計画部 駆動機器グループ 専任 山本圭太氏は「韓国ではIE3クラスの規制基準をクリアする一方で現地法人による認証が必要になる。韓国国内でも産業用モーターおよび、モーター利用機器の需要は多くあり、国内メーカーの中で先駆けて認証取得した利点を発揮していきたい」と話している。

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