GPSなしでも自律飛行する電動ヘリ、福島原発の線量調査へ投入:TECHNO-FRONTIER 2014 ロボット
「TECHNO-FRONTIER 2014」では、GPSを用いずに自律飛行する電動ヘリコプター(ミニサーベイヤー)の飛行デモが行われている。秋には福島第一原発の屋内線量調査に投入される予定だ。
「TECHNO-FRONTIER 2014」(会期:2014年7月23日〜25日 東京ビッグサイト)の特設コーナー「最先端のロボティスクデモ」では、千葉大学大学院 工学研究科教授の野波健蔵氏(自律制御システム研究所 代表取締役)による、GPSを用いずに自律飛行する電動ヘリコプター(ミニサーベイヤー)「MS-06LA」の飛行デモが行われている。
野波氏は2013年の「TECHNO-FRONTIER 2013」においても、自律飛行型ミニサーベイヤーのデモを行っているが、新型のミニサーベイヤーは屋内やトンネル内部など、GPS電波が受信できない場所でもレーザー光とカメラによって自機位置を把握して、自律飛行を行える(関連記事:TECHNO-FRONTIER 2013 ロボット 「陸」「空」連携ロボで、トンネル崩落事故をなくせ!)。
MS-06LAの自律飛行に用いられるのは、水平/垂直それぞれの方向を走査する2基のレーザースキャナ。スキャナは1基で約270度を範囲をカバーでき、秒間100回のレーザー光走査によって周辺環境を3Dでリアルタイム認識し、周囲の地図作成と自機位置の推測を行う。このようにセンサーなどを用い、周辺環境の地図作成と自己位置推定を同時に行う技術は、「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」と呼ばれる。
デモ機はカメラも搭載しており、得られた映像によって、あたかも実際に搭乗しているかのような感覚で操作できる。SLAMによる周辺環境のマップ作成と自己位置推定、さらには搭乗者視点の映像により、GPSが使用できず、人が立ち入れない環境にある建物内やトンネル崩落事故現場などでも安全な飛行が期待できる。操縦操作も「1〜2時間のトレーニングで習得できる」(野波氏)ほど、簡単だという。
あえて完全な無人制御で飛行するのではなく、有人操作を残したのは訳がある。野波氏によれば、目的地と周辺状況が明確であれば自律飛行でも問題ないというが、災害現場など何が起こるか分からない、何があるか分からない、即時の対応が求められる場合には人による判断と細かな制御がまだ必要だからだという。
野波教授の開発するSLAM搭載の自律飛行電動ヘリコプターは今秋より、福島第一原原子力発電所の倒壊した建物内を飛行しての線量調査に投入される予定。搭載バッテリーでの飛行可能時間は約10分だが、トラックの荷台などに搭載できるサイズのバッテリー自動交換システムも開発されており、可能な限り人が近づかなくとも検査飛行を継続できるよう、運用システムの開発も行われている。
ロボット開発の最前線
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