「GPUコンピューティング」が切り開く未来とその現在地:GTC Japan 2014 基調講演リポート(2/2 ページ)
NVIDIAは東京都内でGPUコンピューティングイベント「GTC Japan 2014」を開催した。基調講演では、同社の特別研究員であるDavid B. Kirk氏などが、GPUコンピューティングに関する最新のトピックスと、GPUを活用する未来についてのプレゼンテーションを行った。
仮想化環境と自動車分野での利用も
次にNVIDIAの副社長で、ソリューションアーキテクチャ&エンジニアリングを担当するMarc Hamilton氏が登壇し、NVIDIAのGPUを用いた仮想化環境についてプレゼンテーションを行った。同氏は「デスクトップ仮想化環境にGPUを用いるか用いないかでは、昼と夜くらい違う」と主張。そして、同社の仮想ワークステーション構築ソフト「NVIDIA GRID」を無料体験できる「GRIDテストドライブ」の日本語版を本日より提供すると発表した。
ユーザーは、無料の会員登録を行った後「NVIDIA GRID Workspace」と呼ばれるアプリケーションをインストールして起動することで、GRIDテストドライブを利用することができる。クラウド型のサービスとなっており、会員登録とインストールさえ行えば、どこからでもNVIDIA GRIDを体験することが可能になる。GRIDテストドライブでは、ユーザー側が所有しているデータをブラウザ上にドラッグ&ドロップすることで閲覧することが可能だが、あらかじめ3Dレンダリングソフトや3D CADなどのアプリケーションが用意されており、すぐにNVIDIA GRIDの機能を体感することもできる。
自動車分野でのGPUの利用も拡大
続いてNVIDIAオートモーティブディレクターのDanny Shapiro氏が登壇し、自動車関連のトピックについてプレゼンテーションを行った。同氏は「自動車業界では、以前から設計段階などでGPUコンピューティングが利用されていた。しかし、現在ではバーチャルショールームの製作といった自動車販売の領域などに加え、車載情報機器そのものにも導入され始めている」と語った。
Shapiro氏は、Audi(アウディ)の車載情報機器を例にしながら、NVIDIAのSoCである「Tegraシリーズ」について「短期間での買い替えが前提のコンシューマ向けの製品と違い、車両に組み込む車載情報機器は長期間の利用が想定される。コンシューマ向け製品との性能差が発生しないようにするには、車載情報機器に搭載するSoCがアップグレードしやすいものでなければならない。Tegraはモジュール化された基板を簡単に交換することができ、Windows、Android、Linuxなど幅広いプラットフォームをサポートしている。これにより自動車メーカーは、ソフトとハードの両方を容易にアップグレードできる」と語った。
同氏は「日本では1年間に5000人の方が交通事故で命を落としている。こういった現状をコンピュータビジョンの技術を用いることで改善していくことができる」とし、運転技術におけるGPUコンピューティングの利用についても触れた。例えばCUDAのコンピュータビジョン技術によって、障害物や歩行者の認識を行うことができるという。また、将来的に自動車が自分でスペースを探して駐車を行ったり、駐車スペースからドライバーのところへ移動したりといったといった自動運転技術にも利用できるとしている。
また、運転技術の開発実験では、車両に大型の機材を搭載しなくてはならなかったが、Tegra K1やその開発ボード「Jetson TK1」の登場で小型のシステムでも行うことができるようになったという。
NVIDIAの提案する未来のGPUコンピューティング
基調講演の最後には再びKirk氏が登壇し、NVIDIAの次世代のGPUである「PASCAL」についてプレゼンテーションを行った。PASCALには、これまでGPUコンピューティングにおいてボトルネックとなっていたCPUとGPUなどのバンド幅の差の問題を解決する「NVLink」と呼ばれるコネクティング技術や、3Dメモリ技術が搭載されている。
Kirk氏は、基調講演の後に行われたプレスブリーフィングで「これは現時点で我々が予定しているPASCALのデザインイメージであり、最終製品としてこういった形状になると保証するものではない」としている。なお、NVIDIAはPASCALを2016年に販売する予定だ。
同氏は最後に「今後こうした次世代CPUの利用方法を皆さんと一緒に考えていきたい。すごい未来を世界に見せよう」と語り、基調講演を終えた。
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