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3Dプリンタは臨界点を突破したのかメカ設計インタビュー(3/3 ページ)

新たなモノづくりの姿を示す象徴として「3Dプリンタ」は大きなムーブメントを巻き起こしている。しかし、3Dプリンタそのものは既に1980年代からある技術で過去には夢を追いつつも突破できない壁があった。かつての研究の最前線から今のムーブメントはどう見えるのか。東大名誉教授で現在は世界最大のEMSフォックスコンの顧問も務める中川威雄氏に話を聞いた。

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3Dプリンタの課題は?

MONOist 金属による安価な3Dプリンタの実現において技術的な課題となっているのはどういうところで、どういう課題がクリアできれば実現できると考えていますか。

中川氏 金属の直接造形については、誕生してから20年近くなるにもかかわらず、多くの課題がほとんど変わらずに残ったままです。先ほども指摘しましたが、原料が粉末からスタートし適用材質が限られること、不活性雰囲気中に高温ビームの活用により装置が大掛かりになること、段差の除去が容易ではなく残留熱応力ひずみが発生することなど、解決するのが難しい課題があります。これらが抜本的な技術革新で解決できなければ、金属用の3Dプリンタを幅広く使うことは難しいでしょう。

 また、これらの課題が解決されたとしても「コストと見合うか」という問題が残ります。既存の切削加工技術や型を利用した生産技術は洗練されており、高いコストパフォーマンスを実現しています。そのため3Dプリンタで直接生産する適用分野としては、内部に中空部があるなど、既存の製造法では製造が難しい形状のモノであるということは変わらないような気がしています。

MONOist 今後3Dプリンタを活用しようという人へのアドバイスはありますか。

中川氏 今のところ、従来技術で簡単に製造できるものを、3Dプリンタで作っても利点は少ないと思います。3Dプリンタでとにもかくにもデータがあれば造形はできます。しかしそれを製品クラスの品質に引き上げるには、表面仕上げなどの手間やコストが大きく掛かります。そして、コストや時間で工作機械による製造法と競合することが多いことを忘れてはなりません。繰り返しになりますが、既存の方法を十分に知り、3Dプリンタでなければ製造できない分野を見極めることが重要です。

 積層造形に長い間関与してきたせいか、これまで製品展開してきたメーカーやこの装置を導入して造形事業を行うメーカーや、そこで働いている技術者達の苦労してきた姿が思い出されます。ユーザーの立場で装置を導入したいのであれば、まず既に活用している先輩の事業所の状況をよく調べてみることをお勧めいたします。決して早いもの勝ちで明日では遅過ぎると言った装置ではありません。技術も装置も日々進歩しています。その中で自社の事業にどう生かすかということをよく考えて導入すべきだと考えます。

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