坂村健氏率いるYRP UNLと日本マイクロソフトがオープンデータ/IoT分野で提携:ハイブリッドOSのときのようにはならない!
日本マイクロソフトとYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(YRP UNL)は、政府/自治体や公共交通事業者などが提供するオープンデータ・ビッグデータと、ネットワークに接続されるセンサーや小型デバイスからのデータを蓄積・活用するIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の分野において提携を発表した。
日本マイクロソフトとYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(YRP UNL)は2014年7月7日、政府/自治体や公共交通事業者などが提供するオープンデータ・ビッグデータと、ネットワークに接続されるセンサーや小型デバイスからのデータを蓄積・活用するIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の分野において提携を発表した。
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所の研究成果である国際標準の固有識別番号「ucode」を活用した情報提供基盤「u2:uIDアーキテクチャ2.0」を、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」に搭載。オープンデータ、デバイスデータの統合から、ビッグデータ解析、新たなサービス提供まで、全ての情報を一元的に扱うプラットフォームを構築し、政府や自治体、企業などによる社会実験や事業展開を支援するという。
画像1 左からマイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 兼 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 所長 坂村健氏、日本マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当 織田浩義氏
「今回、マイクロソフトが、われわれのucodeやuIDアーキテクチャ2.0の有効性を認めてくれ、Azureと組み合わせて展開することになった。オープンな技術でも誰も使ってくれなければ意味がない。世界企業であるマイクロソフトが中心となり、今後展開する取り組みの中で、ucodeとuIDアーキテクチャ2.0が世界に広がっていくことを期待している」と、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 所長 坂村健氏は述べる。
uIDアーキテクチャ2.0とは、現実世界にあるモノや場所などを識別するための固有識別番号であるucodeが付与された対象の属性や意味を表す情報をデータベースに格納し、ucodeをキーにその属性や意味情報を取り出すことができる仕組みのことを指す。これをAzureのプラットフォーム層に組み込み、さらにYRPユビキタス・ネットワーキング研究所や総務省、経済産業省、IPAなどが手掛ける各種サービスやオープンデータを活用することで、オープンデータ・ビッグデータ/IoTのためのプラットフォーム「uID-Azure オープンデータ・ビッグデータ基盤」として展開する。
この際、Azure側でキーとなるのが「現在、パブリックプレビュー版が公開されている『Microsoft Azure インテリジェント システム サービス』だ」と、マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 兼 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏。これは業務用デバイス、センサー、OSを問わず、さまざまなデバイスを容易に接続・管理し、生成されたデータを収集できるIoTに必要な一連の標準機能を利用できるものだ。
提携による今後の両者の取り組み
今後、両者は次の2つの取り組みを進めていく。「1つは、オープンデータ・ビッグデータの活用推進、もう1つはIoT分野での技術協力と共同事業だ」(坂村氏)。
オープンデータ・ビッグデータの活用推進では、政府や自治体のオープンデータ提供基盤の構築事業を、uIDアーキテクチャ2.0とAzureによるクラウドプラットフォームの提供などで支援する。また、公共交通オープンデータ研究会にICT会員として参画し、公共交通事業者へのオープンデータ情報通信プラットフォームの提供やマルチデバイス向けアプリケーション開発への取り組みを行う。
一方、IoT分野での技術協力と共同事業では、高精度位置情報サービス事業と、T-Engineフォーラムと連携したIoT分野における新しい技術標準の普及に向けた活動を実施する。IoT分野での技術協力と共同事業の具合的な取り組みとしては、超小型機器向けファームウェア「.NET Micro Framework」でのucodeの標準サポート、Windowsのみならず、iOSやAndroidにも対応するユニバーサルな開発環境の提供などを行う。
また、高精度位置情報サービス事業に関する具体例として、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所が開発した空間情報サービス「ココシル」に、マイクロソフトの機械翻訳技術「Microsoft Translator Hub」を組み合わせた、外国人向けの位置情報サービスを紹介。Microsoft Translator Hubは、さまざまな情報を43言語にリアルタイム翻訳できるもので、「観光地の情報だけでなく、刻々と状況が変わる交通機関の運行状況や交通渋滞の情報、あるいは事故などの緊急情報を母国語で瞬時に表示することができる」と加治佐氏は説明する。
画像5 壇上で坂村氏と加治佐氏が仲良くデモを説明する様子。銀座のucodeが入った「ココシルマーカー」(Bluetooth Low Energyモジュール)を、Windows OS搭載タブレット端末上のデモアプリケーションが検出し、観光情報を表示。43言語から任意の言語を選択することで、リアルタイムに翻訳結果が画面の観光情報に反映される
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