電力平準化や課金を意識して策定された欧州のEV用充電規格「コンボ」:EV用充電器の通信規格ISO/IEC 15118とは(前編)(2/2 ページ)
欧州や北米の自動車メーカーが中心になって規格策定を進めている、普通充電と急速充電を1つのコネクタで行える「Combined Charging System(コンボ)」。欧州向けコンボでは、電気自動車と充電器の間をつなぐ通信プロトコルとしてISO/IEC 15118を使用している。本稿では、このISO/IEC 15118について解説する。
ISO/IEC 15118の規格策定の状況
プロトコルの概要と使用例を規定したISO/IEC 15118-1と、ネットワークとアプリケーション層の仕様を規定したISO/IEC 15118-2は、国際規格(IS)として既に発行されています。物理層とデータリンク層の仕様であるISO/IEC 15118-3はまだ正式発行前のドラフト版(DIS)となっており、早ければ2014年後半にも国際規格として発行される見込みです。また現在、コンフォーマンステストの仕様も策定が進められていますが、DISの前の委員会ドラフト(CD)の段階です。さらに非接触充電の仕様に関わる3つの規格が新規プロジェクトとして登録されています(2014年5月現在)。
AC/DC充電、複数の課金方式に対応するISO/IEC 15118
ISO/IEC 15118では、さまざまな要件を考慮したユースケースを想定しています。例えば、複数の車両を管理する運行業者の駐車場における充電や、公共の駐車場での充電、路肩での公共充電、自宅などプライベートな場所での充電などです。特に、複数のEVが同時に充電する場所では、限られた電力を効率よく供給するために負荷を平準化して、低コストで車両を充電できることが重要になります。また公共の場所における充電の場合、簡単かつ多様な方法(例えば、クレジットカードや電子マネー、車両電力契約情報など)で電気使用量の決済を行える仕組みも必要です。
負荷を平準化させながら、ユーザーと電力系統システム全体にとって最も効率よく充電するには、充電器が電力網側から電気料金表や電力供給スケジュールなどを収集し、それらの情報を車両に伝え、車両が出発時間やバッテリーの充電状態、料金や環境負荷などさまざまな状況を考慮して最も効率良い方法を選択できる必要があります。
ISO/IEC 15118規格の対象範囲は充電器とEV/PHEVの間の通信ですが、想定しているユースケースで課金や電力供給スケジュールのデータをやりとりできるように、通信メッセージを定義しています。また課金情報や契約認証などの情報を交換するので、セキュリティにも配慮しています。さらに、将来的にインターネットなどを使用して電気自動車のユーザーが満足するような付加情報サービスを提供できるような仕組みも用意しています。
ISO/IEC 15118-2では、上位レイヤーの通信プロトコルが定義され、DC充電とAC充電の両方式の充電シーケンスを規定しています。EVに対して充電料金を課金する方式は、主に外部認証方式(External Identification Means:EIM)とプラグ&チャージ(Plug and Charge:PnC)の2通りを想定しています。外部認証方式の場合、車両の使用者が、現金や電子マネー、プリペイドカード、クレジットカードなどを用いて、充電器の設置場所もしくは充電器本体で支払いを行います。これは現在、ガソリンスタンドでガソリン車に給油する際の支払い方法と同じです。一方。プラグ&チャージは、車両側に充電契約の証明書情報をインストールしておき、充電のために車両と充電スポットが通信する際に自動的に課金を行います。
このようにISO/IEC 15118は、ACとDC両方の充電方式、さまざまな方法での課金方式に対応できる規格になっています。
次回は、ISO/IEC 15118で使用される通信プロトコルと充電シーケンスについて説明します。
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