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モデルベース開発を成功させるには相応の投資が必要ですモデルベース開発奮戦ちう(3)(3/4 ページ)

モデルベース開発を行うにはさまざまなツールを購入する必要がある。事業担当者にとってツールの選定と予算確保は悩みの種。それは、主人公の京子の上司である山田課長にとっても例外ではなかった。

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予算の承認頂きます!

 1週間後に、役員室で、追加予算可否の会議が開催された。出席した大滝部長と山田課長の話によると、以下のような感じだったらしい。


次は、車載電装開発部のモデルベース開発の費用について審議を行います。大滝部長、まずは趣旨をご説明ください。


大滝部長

豊産自動車から、次期車両の制御システムをモデルベース開発で行いたいとの要望がありました。モデルベース開発は、今後の開発手法の主流となり得るもので、当社の競争力を維持発展させるためには必要不可欠です。


 大滝部長が力強く切り出す。

大滝部長

MATLAB/Simulinkなどで記述したモデルは、実行可能な動く仕様書であり、そのままシミュレーションに掛けることもできます。さらに、このモデルを使えば、さまざまな検証やコードの自動生成などを行えます。机上段階で網羅的な検証を行った後に、実製品の製作に着手できるので、開発効率や品質の向上も見込めます。ただし、モデルベース開発を行うには大きな投資が必要です。提出した実行計画書に示しているのは、モデルベース開発を行う上で、最低限必要な購入品になります。投資の詳細については、モデルベース開発課の山田よりご説明いたします。


 山田課長が投資の詳細について説明していく。MATLAB、Simulink、HILS、RCP、自動コード生成、Back-to-Backテストなど、役員にとっては聞きなれない言葉が多い。モデルベース開発を導入するのは初めてのことなので、案の定、立て続けに質問が出た。

  • 「このモデルベース開発というのを利用すると、開発人員数を減らせるのか?」
  • 「シミュレーションを活用すると、実車での検証はいらなくなるのか?」
  • 「どのくらいの期間と投資で効果を出せるのか?」
  • 「もしモデルベース開発をやらなかったらどうなるのか?」
  • 「自社の技術ではできないのか?」

 大滝部長と山田課長は落ち着いて、1つ1つの質問に答えていった。

大滝部長

モデルベース開発はあくまでも手段です。われわれ製造業の使命は、良い物を早く安く軽く作ることです。道具は使うことが目的でなく、その道具を使って賢く開発することが目的です。適切な道具を使いこなせば、われわれは創意工夫でき、さらにもっと良い製品を開発できるようになります!


 大滝部長は説明を締めくくった。

 役員会のメンバーが見合う中、尾上取締役が質問を投げかけた。尾上取締役は、一介の制御技術者から役員まで登りつめた伝説のエンジニアで、私の大先輩に当たる。

尾上取締役

モデルベース開発をやらないと、わが社は業界から取り残されるということなのかね?


大滝部長

少なくとも、豊産自動車からモデルベース開発への協力要請が発信され、わが社にも声が掛った今が最後のチャンスだと思います。この機を逃すと、豊産自動車だけでなく他の自動車メーカーからも見限られ、二度と声が掛らなくなる可能性もあります。


尾上取締役

では、やらなければならないだろう。ただし、きちっと成果を出すこと。その上で、全社にモデルベース開発を侵透させる役割を担ってもらう。そのためには、きちんとしたプロセスを構築する必要がある。量産開発と並行して進められるかね?


山田

やります! ぜひやらせてください!!


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