クルマを作るって、こんなに多くの力が必要なんだ:モデルベース開発奮戦ちう(2)(1/4 ページ)
燃費世界一を目指すハイブリッド車「バンビーナ」の開発に関わる中で、モデルベース開発を一から勉強している電装部品メーカーの若手女性技術者・小野京子。初めて参加した自動車メーカーの「大部屋会議」に圧倒されつつも、モデルベース開発に“前のめって”いく。
豊産自動車。世界でも屈指の売り上げを誇る日本を代表する自動車メーカーだ。本社ビルのある町は、全体がこの企業のためにあると言っても過言ではないほどだ。私は初めて訪問する豊産自動車の本社ビルの大きさに圧倒されつつも、鈴木さんと面会することになった。
ようこそ、お越しくださいました。
えっ、あの、今日はよろしくお願いします。
丁寧な対応に私は面食らった。
今日は大学の後輩の京子じゃなくて、同じクルマを開発する大切なパートナー企業の技術者である小野さんとして対応させてもらいます。
よ、よろしくお願いします(いけないけない。今日は、正式にアポイントを取って、開発打ち合わせとして来たんだった。気を引き締め直さなくちゃ)。
「バンビーナ」の開発について話を聞く中でモデルベース開発の話題になった。先日のJMAABのオープンカンファレンスで私が一番気になっていたのは、標準化を意識した無償公開の「スタイルガイド」のことだった。そこで、単刀直入に疑問を投げかけてみた。
JMAABでは、なぜスタイルガイドを無償公開しているんでしょうか?
モデルの可読性を高めながら、設計の意図をスムーズに伝達することが最大の目的ですね。
鈴木さんの説明によると、モデルの書き方次第で、制御や処理の実行順が変わったりするらしい。制御や処理の実行順が変わると、正しく動かなかったり、品質が悪かったりと、みんなが迷惑することになってしまう。そこで、モデルの書き方について業界内でコンセンサスを共有するために、各社の知見をまとめて指針を定めたのがJMAABのスタイルガイドなのだという。
JMAABのスタイルガイドは、技術者への教育なども考慮して、非競争領域のものとしてオープン(無償公開)になっている。ただしJMAABのスタイルガイドは、あくまでも指針を示したものでしかないので、実際の運用には各社独自の肉付けが必要だ。
豊産では、社内にモデルベース開発のワーキング活動を行っていて、実際の運用に使える独自の肉付けを行ったものを「豊産スタイルガイドライン」としてまとめています。このガイドラインでは、入力信号や出力信号への命名規則、制御ブロックへの命名規則、注意事項として記入すべきルール、そろえるべきドキュメントなど細かなルールを決めています。
そう言って鈴木さんは、豊産自動車がモデルベース開発に用いているスタイルガイドラインを見せてくれた。……ふむふむ。これを参照すれば、誰がモデルを書いてもあまりばらつきは出ないだろう。もっとしっかり読みたいな……。
あの……。このスタイルガイドラインをお借りできませんでしょうか!
そうおっしゃると思い、事前に社内の貸出審査を通しておきました。ぜひバンビーナで重要な役割を果たす「CVT∞」の開発に活用してください。それから、他にもこういった資料も必要になると思います。
鈴木さんは、モデルベース開発を行う上で必要になると思われる資料を次々と説明してくれた。
よ〜し! これでモデルベース開発の準備……の準備はできそうだ!!
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