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交通ビッグデータを大局的に把握、富士通が軌跡分析技術を開発車載情報機器

携帯電話機や自動車のカーナビゲーションシステムのGPSなどを使って測位した位置情報は、交通ビッグデータとも呼ばれ、その活用に向けた動きが加速している。富士通研究所は、この交通ビッグデータを大局的に把握できる軌跡分析技術を新たに開発した。

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新技術によって生成した経路グラフ

 富士通研究所は2014年5月7日、携帯電話機や自動車のカーナビゲーションシステムのGPSなどを使って測位した位置情報を時刻順に並べて生成される軌跡データについて、分析に適した形にまとめ、人やクルマの流れを大局的に把握できる軌跡分析技術を開発したと発表した。今後は実証実験を進め、2014年度中の製品搭載を目指す。

 今回開発したのは、軌跡データを分析するための前処理の技術となる、軌跡データを簡略化した経路グラフの自動生成技術である。この経路グラフを用いると、全体が見渡せるので、人やクルマの流れの大局的な把握が可能になる。

 従来の軌跡データの分析は、取得した位置情報を道路データに対応させた後に、道路データ上で移動経路を分析する手法が一般的である。この手法は、道路データが数十m間隔で整備されていることもあって、局所的な交通流を多数抽出するのに適しているものの、広範な領域にわたる交通流の抽出には向いていないという課題がある。さらに、道路が複雑に入り組んでいる場所では、位置情報を道路データに対応させるという手順で、どの道路を走っているのかを判断できなくなるという問題もあった。

 例えば、従来の軌跡データの分析では、取得した位置情報の座標間の距離を用いて集約を行う。この場合、部分的に似ている軌跡を持つ軌跡データが局所的に集約されてしまうので、大域的な交通流として保持されない。これに対して新技術では、軌跡データを曲線として捉え、曲線の類似度に基づいて似たような軌跡データを集約するので、大域的な交通流を保持できる。

軌跡データの集約
軌跡データの集約。従来手法(右上)と新技術(右下)の比較 出典:富士通研究所

 また、経路グラフを生成する際に、従来は必要だった位置情報を道路データに対応させる手順が不要になることもメリットになる。これによって、道路工事などによる道路データの改変の影響も受けずに済む上、既に精度が決まっている道路データに左右されずに集約の粒度を自由に設定できるようになる。

道路データ(左)と新技術によって生成した経路グラフの比較。従来のように、数十m間隔で整備されている道路データに対応させる手順を踏まずに、曲線の類似度に基づいて似たような軌跡データを集約して経路グラフを生成している 出典:富士通研究所

 この技術を用いれば、マラソン大会などの大規模イベント開催時に、多くの人が利用する迂回ルートを素早く見つけ出し、事前の推奨通行ルートの設定や誘導計画に反映できる。道路データが不要なので、道路地図がない大規模テーマパーク内の人の流れ、航空機や船舶の航路分析などへの応用も可能だ。

 なお本技術は、「富士通フォーラム2014」(2014年5月15〜16日、東京国際フォーラム)に出展される。

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